ベトナムの国旗
~祝日の掲揚を忘れずに~

2016年08月26日公開

ベトナムに住んでいる人は当然知っているベトナムの国旗。赤地の布の中央に黄色い星が配されたもので、日本の日の丸に似たシンプルさに親近感を持っている人もいるかもしれません。今回は、このベトナム国旗(Quốc kỳ Việt Nam、クオックキーヴィエットナム)について詳しく解説したいと思います。 祝日には国旗の掲揚が義務付けられていますので、特に一軒家に住んでいる外国人は注意が必要です。 また、国旗を故意に毀損した場合、ベトナムでは犯罪になります(詳しくは記事最後で)。


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現在のベトナム国旗「金星紅旗(Cờ đỏ sao vàng)」

現在のベトナム国旗は 「金星紅旗(Cờ đỏ sao vàng)」 と呼ばれている、赤地の中央に金色の星が配置されたもの(Cờは旗、đỏは赤、saoは星、vàngは金の意味)。ベトナム戦争が終結した翌年、1976年7月2日にベトナム統一国家であるベトナム社会主義共和国が成立した際、国旗として正式に定められました。

旗のサイズは、長辺:短辺の比率が3:2で、中央に配された星は、5つの頂点を通る円の半径が長辺の5分の1の長さになっています。星は頂点のひとつが真上に来るように配置しなければならず、逆さまに掲揚してはならないと規定されています。

赤色は「革命で流された血」を表すと言われており、社会主義国家の国旗などによく用いられます。黄色(金色)は伝統的に「ベトナム民族」を象徴する色とされています。現在の国旗の原型をデザインしたのは、ベトナム民族解放に尽力したグエン・フー・ティエン(Nguyễn Hữu Tiến)氏。彼が残した詩から、 赤は血、黄色(金色)はベトナム人の肌の色を表し、星(五芒星=ごぼうせい)の5つの突起は、「知識人」「農民」「労働者」「商人」「兵士」 を意味しており、この5つの階級の団結を象徴していると解釈されています。
 

ベトナム国旗の歴史~1945年独立宣言以降

ベトナムの法律で定められた最初の国旗は、ホー・チ・ミン主席が1945年9月2日に独立を宣言して成立した、ベトナム民主共和国の国旗です。ベトナム独立の直接のきっかけとなった 8月革命 を主導したベトナム独立同盟会(Việt Nam Ðộc Lập Ðồng Minh Hội=越南独立同盟会、略称:ベトミン)が使用していた旗を、そのまま国旗として採用しました。


ベトナム民主共和国国旗(初代)

現在の国旗に比べて、星の形が少しぽってりしていますね。1940年11月23日の南部蜂起(Nam Kỳ khởi nghĩa、ナムキーコイギア)の際に初めて掲げられたそうです。

第1次インドシナ戦争終結後、ジュネーブ協定によりベトナムが南北に分断された翌年の1955年、北ベトナムと呼ばれるようになったベトナム民主共和国は、国旗の五芒星のデザインをスリムに変更します。これが、現在の国旗まで受け継がれています。

南北に分断されたことで、1960年に南ベトナム政権に対抗する勢力「南ベトナム解放民族戦線」が結成されます。この解放戦線が使用した旗が下の2つに塗り分けられた旗です。


南ベトナム解放民族戦線の旗

2代目のベトナム共和国国旗の赤地の下半分を青色にしたものです。これは、ベトナムの南半分が帝国主義勢力によって支配されていることを表しています。 1975年4月30日の南部解放(サイゴン陥落) 後、1976年7月に正式に南北統一国家であるベトナム社会主義共和国が成立するまでの1年あまり、南には暫定国家として南ベトナム共和国が成立しますが、その国旗として採用されました。
 

さて、1954年にベトナムが南北に分断された後、南に成立したベトナム共和国(南ベトナム)は、もちろん北ベトナムとは異なる国旗を採用しました。


ベトナム共和国(南ベトナム)の国旗

ベトナムでは古来から、民族を象徴する旗として黄色い旗を使用してきたため、ベトナム共和国の国旗は黄色の地を採用。その上に描かれている3本の赤い線は、北部、中部、南部の3地方を表しています。南北が統一されたことで、現在ベトナム国内でこの旗を見ることはありませんが、社会主義体制を受け入れられず海外に逃れたベトナム人の間では、いまだにこの旗が使用されています。 現在のベトナム政府にとって「反体制」を意味する旗ですので、ベトナム国内で面白半分に所持することは控えましょう。
 

祝日には国旗掲揚が義務付けられている!

ベトナムでは法律で、公的機関などで国旗を掲揚しなければならないと規定されていますが、 一般家庭でも、 国が定めた祝日 (新暦正月、旧正月、フン王の命日、南部解放記念日、メーデー、建国記念日)にあたって国旗を掲揚しなければなりません。 祝日の前に各地域の指導部から何日から何日まで国旗を掲揚するよう指示が出されますし、祝日以外にも大きな記念日に掲げるよう指示が出ることがありますので、それに従って国旗を掲揚しましょう。但し、 マンションの場合は、一般的にマンション全体でひとつの国旗を掲揚することになっていますので、各戸ごとに掲げる必要はありません。

また、国旗を掲揚することは愛国心の表れですので、指示された期間以外にも掲揚するのは、問題ありません。

ちなみに、ベトナムの公立学校では、毎週月曜日の朝、 国歌 斉唱とともに国旗を掲揚します。
 

国旗の取り扱いは慎重に

2016年5月にべトジョーニュースで取り上げましたが、 酔っ払った男が国旗を破り、禁錮9か月の実刑判決 が言い渡されたというケースがあります。ベトナムには「国旗侵犯罪(国旗侮辱罪)」というものがあり、 国旗を故意に毀損する行為に対して、最高3年の禁錮刑が科される ことになっています。

故意に毀損する行為とは、例えば、国旗に絵や文字を書き込む、燃やす、穴を開けたり裂いたりする、汚す、踏みつける、国家や民族を侮辱する行為に国旗を使用するといった行為です。そのため、国旗の取り扱いには十分注意してください。また、古くなったり色あせたり、皺ができた国旗を掲げるのもよくありませんので、しまうときはなるべく皺ができないようたたんだり、掲げる前にアイロンがけをするなどし、古くなったら新調するようにしましょう。祝日が近くなると道端に国旗売りが出没します。

なお、古くなった国旗の処分方法に関する規定はないようですが、そのまま捨てるのはやはり良くありません。各家庭ではそのままとっておくか、家庭内で枕の詰め物や服の修繕に使ったりすることもあるそうです。やむを得ず捨てる場合には、人目につかない方法で、国旗だとわからないくらいに裁断するなどして処分しましょう。
 

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