華麗なるアオザイの世界
~ホーチミン市アオザイ展示場~

2016年03月18日公開

ホーチミン市では3月は「アオザイ月間」 です。有名なアオザイデザイナーのシー・ホアン氏の アオザイ展示場(Aó dài Exhibition) が1区にあるのをご存知でしょうか。(参考:べトジョーニュース「ホーチミン:アオザイ展示場オープン、バオダイ帝の即位服も展示」 )。ここでどのような展示が行われているのか、見に行ってみました。落ち着いた雰囲気の中で、ベトナムの古き良き伝統を堪能できますよ。


© T. Kondo

アオザイってなに?

アオザイ(Aó dài、南部発音はアオヤイ) とは、ベトナム人(人口の大多数を占めるキン族)の民族衣装のこと。Aóは「上衣」、dàiは「長い」という意味で、長い上衣とズボンを組み合わせた衣装。中国の影響を強く受けたもので、両脇の長いスリットが特徴です。

現代の女性用のアオザイは、体を覆い隠すようなデザインでありながらも、オーダーメイドで作る体にフィットしたデザインで、両脇のスリットからはわき腹が見え隠れし、世界では 「女性の美しさをもっとも際立たせる衣装」 とも評価されています。

ちなみに、両脇のスリットは元々は中国北方の騎馬民族の衣装が起源となっています。馬に乗るときに足を広げやすいように両側に長いスリットが入れられました。ベトナムでは馬に乗る習慣はありませんが、このスリットが伝わったからこそベトナム女性の美しさが引き出されている、というのが面白いですね。
 

展示場の場所はホーチミン市のど真ん中

アオザイ展示場は、ホーチミン市市庁舎前からサイゴン川までを貫くグエンフエ(Nguyễn Huệ)通りにあります。住所はグエンフエ通り77番地(77 Nguyễn Huệ, Dist. 1)で、 サイゴンプリンスホテル のすぐ隣です。大きなホテルの横ということもあり、ここにあると知らなければ見落としてしまうようなたたずまいです。


© T. Kondo, 建物の上部には「AO DAI EXHIBITION」の文字

ベトナムの観光施設の多くは開場時間がとても早いのですが、ここは10時からと少し遅いのでご注意ください。そのかわり、夜は20時まで開いています。


© T. Kondo
 

入場料はちょっとお高め

それでは、早速入ってみましょう。


© T. Kondo

古き良き時代を感じさせるようなエントランス。ベトナムと西洋がミックスされたような雰囲気です。右奥のおしゃれなライトの下が受付です。アオザイ展示場ですので当然のことながら、受付の女性2人も美しいアオザイを着ています。

チケットは通常時で 1人20万VND(約1020円)。 かなり高いですが、立地や個人経営であることを考えると、このぐらいの値段になってしまうのでしょう。

チケットは展示室に入る際に回収されてしまいますので、チケットの記念写真を撮るなら展示室に入る前に。また、飲み物等は受付に預けなければなりませんのでご注意を(帰るときに返却されます)。


© T. Kondo

入口の壁の両側には、アオザイ製作に欠かせないミシンがずらりと並べられていました。年代物で、おしゃれなだけでなく、歴史的な価値もありそうです。
 

アオザイのデザインの幅広さを堪能

展示スペースはの建物の2階部分にあり、係員の案内に従って、入口左奥のエレベーターで昇ります。


© T. Kondo

2階に着いてエレベーターを降りると、すぐ右側にこの壁紙がありました。部屋の明かりも非常に落ち着いており、心地よいBGMが流れています。お香が焚かれていたのでしょうか、良い香りがしてとてもリラックスできる空間です。

そして、ここでアオザイを着た係の女性にチケットを渡し、アオザイの展示スペースに入ります。残念ながら、ここから先は 写真撮影が禁止 されています。撮影すると係員に注意されますので、ご注意を。

奥に長くのびる部屋にアオザイが並べられています。中央に飾ってあるアオザイはガラスケースに入っており、展示されているアオザイの中でも特に貴重な物だと思われます。

入口から入ってすぐ左には、かわいらしい子ども用のアオザイも展示されています。

無地のアオザイからさまざまな模様や装飾が施されたアオザイまで、 その展示数は99点 にも及ぶそうです。筆者が最も魅了されたのは、白地に数本の青とオレンジの太いストライプが入った現代的なアオザイ。シンプルかつ斬新でありながらも伝統的な雰囲気があり、アオザイのデザインの幅広さを感じました。

展示スペースの中央奥には、ガラスケースの中で両腕部分を広げ、堂々とたたずんでいるアオザイがあります。 阮(グエン)朝最後の皇帝バオダイ(保大)帝(在位:1926~1945年)が実際に着用したアオザイのレプリカ です(写真は こちら を参照)。

オレンジがかった黄色の布地に豪華な刺繍がほどこされ、鮮やかな青の布で縁取りがつけられています。これは、バオダイ帝が1926年に即位した際に着用した式服を1991年に複製したもので、展示物の中の一番の目玉となっています。威風堂々とした姿に上品さと格式の高さが見受けられ、とても魅了されました。

また、展示スペースの一番奥には16~17世紀頃のアオザイの複製があります。英語の解説もあり、当時のアオザイのディテールが説明されています。現代のアオザイと比較すると面白いと思います。

こちらの動画は、シー・ホアン氏デザインのアオザイコレクションです。

 
日本でも普段着物姿の人を見ることがあまりないように、ベトナムでも普段の生活では意外とアオザイ姿を目にすることはありませんし、制服などで着用されているアオザイはポリエステル製の現代的なものばかり。ここでアオザイの歴史に思いをはせながら、ぜひその奥深さを堪能してみてください。
 

アオザイ展示場の詳細は こちら

 
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