日本の絵本をベトナム語で
~日本文化理解や越語学習に~

2016年04月15日公開

べトジョーニュースの 「日本の絵本をべトナムで初めて出版、まず3作品」 という記事で紹介しましたが、2014年から 日本の絵本のベトナム語版が続々と出版されています。 ベトナムでは絵本の読み聞かせの習慣が殆どなく、小さな子供に読んで聞かせるのに面白そうな絵本が殆ど見つからない状態でしたが、今ではこのベトナム語訳された日本の絵本がたくさん出ているので、ベトナム人夫との間に6歳の息子を持つ筆者はとても大変助かっています。

教育熱心な人が多いベトナムでは今、経済成長とともに海外の子供の育て方に興味を持つ保護者が増えており、日本や韓国などの子育て本のベトナム語訳が出版されるようになりました。そして「読み聞かせ」を知った親たちが絵本にも興味を持つようになっています。

また、ベトナム人と結婚すると、子供を取り巻く環境や習慣が日本とベトナムで大きく異なっていたり、子育てにあたって夫婦の意見が衝突することもあると思います。子供だけでなく親同士が異文化を理解し合うためにも、日本の絵本は有用なツールになりそうな気がします。日本語版と合わせて読めば、ベトナム語や日本語の習得にも使えますよ。


 

「EHON Nhật Bản」シリーズ

日本の絵本は主に、文学出版社(Nhà Xuất Bản Văn Học)より「EHON Nhật Bản(ニャットバン=日本)」シリーズとして出版されています。大きな書店で取り扱っていますが、日本のように並べ方が系統だっていないので、なかなか見つからなかったりします。その場合は店員さんに「Truyện EHON Nhật Bản」と伝えればわかってもらえると思います。(Truyện=トゥイエン、物語)

また、ベトナムの書店では売り切れるとそれきり入荷しないことが多く、注文するのも難しい状況です。見かけたらとりあえずすぐ買っておくのがよいと思います。日本ではハードカバーで出されている絵本も、ベトナムではソフトカバー化されており、値段は6万VND(約290円)程度からと、日本の販売価格に比べるとかなり手ごろな値段になっています。

それではベトナムでどんな日本の絵本が出版されているのか、一部を紹介します。
 

赤ちゃん向け絵本(0~2歳)

+画像上
<題名>Cùng chơi với bé – Đi tắm thật thích
<原題>シャンプーだいすき (あかちゃんのあそびえほん) :木村裕一 作
<内容>動物たちとゆうちゃんが、からだをあらって、かみの毛もあらってピカピカほかほかに。お風呂の楽しさが伝わります。

+画像下
<題名>Cùng chơi với bé – Ú òa ! Ú òa !
<原題>いないいないばああそび (あかちゃんのあそびえほん) :木村裕一 作
<内容>手で顔をかくしたこいぬのコロちゃんが登場。「いないいなーい」と手をめくると、「ばあー」と笑顔があらわれます。ことりのピイちゃん、ねこのミケ、かいじゅうさん、ゆうちゃんも「ばあ!」、そして最後のママは・・・。

この二つは「Ehon」シリーズではないのですが、赤ちゃんと一緒に遊べる絵本です。我が家には日本語の「いないいないばああそび」があり、息子が赤ちゃんの時お気に入りの絵本でした。「いないいないばあ」の遊びは世界各国であるそうで、 ベトナム語では「Ú òa !(ウーオア)」 などと言い、「Ú」で顔を隠す、「òa」で顔を出す動作をします。

 

+画像左
<題名>Tay xinh đâu nhỉ ?
<原題>おててがでたよ :林明子 作
<内容>もこもことした洋服から体の一部が次々でてくる絵本です。「あたまはどこかな?」とページをめくると「ぬうー」とあたまがでてきます。絵本や赤ちゃんの体の場所を指差して、「これはなにかな?」と教えてあげると、親子で楽しめますよ。

+画像右
<題名>Cùng lau cho sạch nào !
<原題>きゅっきゅっきゅ :林明子 作
<内容>赤ちゃん、ねずみさん、うさぎさん、くまさんが仲良く並んで「いただきまーす」。スープをこぼしたらふいてあげるよ。「あーおいしかった」と、お皿がからっぽになったとき、 赤ちゃんのお口のまわりをふいてくれるのは? 「いただきます」など食事の習慣を教えてあげるのにいいですね。
 

<題名>Chào Mặt Trăng !
<原題>おつきさまこんばんは :林明子 作
<内容>くらい夜空に丸いお月様がぽっかり顔を出したのですが、おはなししようとやってきた雲にじゃまされてしまいます。でも、雲はすぐに去ってくれて、お月様はにっこり。丸に顔が描かれたお月様の表情に、赤ちゃんはとてもよく反応しますよ。
 

<題名>Bé Trứng
<原題>たまごのあかちゃん :柳生弦一郎 作
<内容>「たまごのなかにかくれんぼしているあかちゃんはだあれ?」と、大きなたまご、小さなたまごの中からいろんな動物が登場します。鮮やかな色使いが楽しい絵本です。卵から生き物が生まれるんだよという理解にもつながります。
 

<題名>Giày nhỏ đi thôi !
<原題>くつくつあるけ :林明子 作
<内容>一足の赤ちゃん用のくつがさんぽにおでかけ。ぱたぱたあるいたり、ぴょんぴょん飛び跳ねたり。転んでしまってもひとりでよいしょと起き上がり、さいごに眠くなってぐーぐー寝ます。お出かけに靴を履くようになると、この絵本の中のくつを履いて出かける自分を思い浮かべて聞いているかもしれませんね。
 

<題名>Ai ở sau lưng bạn thế ?
<原題>うしろにいるのだあれ―うみのなかまたち :ふくだとしお 作
<内容>イルカやウミガメ、トビウオ、ラッコなどが登場。それぞれのどうぶつのうしろにいるのはだれかな?と想像させながら、海の生物を紹介していきます。「うみのなかまたち」のほかにも、シリーズでさまざまな動物バージョンがありますよ。

赤ちゃんから楽しめる絵本ですが、6歳の息子も大好き。海の生物の名前を新しく覚えるだけでなく、海の中にたくさんの生物がいて、それらがすぐそばで一緒になって生活しているということに新鮮に驚いたようでした。    

2~3歳向け絵本

<題名>Cá vàng trốn ở đâu rồi nhỉ ?
<原題>きんぎょがにげた :五味太郎 作
<内容>あかいまあるいきんぎょが、部屋のあちこちに逃げていき、景色の中にまぎれこんでしまいます。それを「きんぎょはどこだ」と探す絵本。親子で「どこどこ?」「いたねえ」と楽しめます。

私は五味太郎さんの絵本が好きで、日本語の絵本を買って持っていたのですが、息子は言葉がしゃべれないときからこの絵本が大好き。歌うように「きんぎょはどこだ♪どーこににげた♪どこ?」と言うと、にっこり笑って指差して教えてくれます。しゃべれるようになると、今度は逆によみきかせてくれたりして。とっても楽しい絵本です!  

 

<題名>Bull chơi trốn tìm
<原題>ブルくんとかなちゃん :ふくざわゆみこ 作
<内容>かなちゃんの家にやってきたブルドッグのブルくん。ブルくんはかなちゃんとお友達になりたいのですが、ほっぺをなめても、かなちゃんのピアノと一緒に歌っても、かなちゃんは逃げ出してしまいます。どうすれば仲良くなれるのかな? 相手を思いやる気持ちをはぐくむ絵本です。
 

<題名>Chiến công đàu tiên của bé mi
<原題>はじめてのおつかい :林明子 作
<内容>5歳のみいちゃんはが初めてママにお使いを頼まれて、牛乳を一人で買いにでかけます。大喜びで引き受けて、百円玉を2つ握り締めて坂のてっぺんにあるお店に向かったものの、途中で転んでしまい、百円玉が転がってしまうし、手足は痛いし。でも、何とかがんばって吸入を買ってほっとすると、涙がほろり。子供だけでなく読み聞かせする親も展開にどきどきしてしまいます。

1977年出版の絵本で、読み聞かせする親のほうも「この本読んだことある!」と懐かしくなってしまう絵本です。  

 

<題名>Asae và em gái bé nhỏ
<原題>あさえとちいさいいもうと :筒井頼子 作・林明子 絵
<内容>あさえが家の前で遊んでいると、お母さんが妹が寝ているすきにお出かけ。すると、妹が目を覚まして出てきてしまいます。おねえちゃんらしく妹と一緒に遊んでやりますが、気がついたら妹がいない! 不安でいっぱいになりながら妹を探します。妹や弟ができたときに読んであげるといいかもしれませんね。

妹や弟がいる子供に読み聞かせると、自分の身に置き換えて一層はらはらどきどきしそうですが、兄弟のいない私の息子も「あやちゃんどこにいっちゃったの???」とあさえの気持ちになってどきどき。読んだ後、突然どこかにいっちゃったら、お母さんが心配しちゃうということにも思い至ったみたいでした。  

 

<題名>Em gái bị ốm
<原題>いもうとのにゅういん :筒井頼子 作・林明子 絵
<内容>あさえが幼稚園から帰ると妹がぐったり。病院に連れて行くと盲腸だとわかり、そのまま入院することに。普段はうるさいなと思う妹も、いないとさみしい。お見舞いに行くことになって、あさえは何を持っていったら妹が喜ぶか一生懸命考えます。普段と違うことを経験して、大きく成長する瞬間が描かれていて、読んでやる親のほうも感動がこみ上げてくる絵本です。
 

4~5歳向け絵本

<題名>Tấ cả đều đi ị
<原題>みんなうんち :五味太郎 作
<内容>大きなぞうは、大きなうんち。小さいねずみは、小さいうんち。すべての動物がいろんな形、いろんな色、いろんなにおいのうんちをする。どうしてみんなうんちをするの? 子供のころ、うんちをいやがったり、がまんしてしまったりすることがありますが、うんちをするのがあたりまえ、ということを子供に教えてくれます。

うちの息子は、題名を聞いただけで大爆笑! 男児はこの手のものが大好きですね。但し、ベトナム人的には「なんでこんな汚いことを絵本なんかに・・・」と思うようです。トイレの大切さを家族で認識しあうのにいいかもしれません。ベトナム語のリズムもとても面白いです。  

 

<題名>Chuyện xì hơi
<原題>おなら :長新太 作
<内容>おならはどうして出るのか? くさいおなら、くさくないおなら、いろいろあるけれど、どうして? おならの話をユーモラスかつ科学的にわかりやすく説明してくれます。

こちらも息子は大爆笑で、大好きな絵本です。人間だけでなく、いろいろな動物がおならすることだけでなく、そして動物によって食べるものがぜんぜん違うことを知って、動物がどうやって生きているのか興味を持ったようです。  

 

<題名>Trường mẫu giáo của chú voi Grumpa
<原題>ぐるんぱのようちえん :西内ミナミ 作・堀内誠一 絵
<内容>ぐるんぱは大きいけれど汚くてくさいゾウさん。そんなぐるんぱはジャングル会議で働きに出ることに決まりました。きれいになって出発したぐるんぱは、ビスケット屋さんやお皿づくり、くつ屋さんなど色々挑戦しますが、どれも失敗ばかり。でも、子供たちと会って、歌を歌ってやるとみんな大喜び。そこで、幼稚園を開くことにしました。1966年初版のロングセラー作品です。
 

<題名>Mako và chuyến phiêu lưu trong bồn tắm
<原題>おふろだいすき :松岡享子 作・林明子 絵
<内容>男の子のまこちゃんが一人でお風呂に入り体を洗っていると、お風呂の底から大きなカメ、ペンギン、アシカ、カバ、そしてクジラまでがやってきます。お風呂で繰り広げられる不思議な世界、子供の一人遊びの空想をそのまま絵本にしたようです。

やはり男児は「裸」とか「おしり丸出し」にきゃっきゃと大うけ。ベトナムにはお風呂に入る習慣がないので、日本で湯船につかるのを怖がる子供もいると思いますが、このお話をしてあげれば、お風呂が楽しみになるかもしれませんね。  

 

<題名>Chuyện những chiếc răng
<原題>はははのはなし :加古 里子 作
<内容>だるまちゃんシリーズで知られる加古里子さんによる「歯」の絵本です。歯の役割、なぜ虫歯になるのか、なぜ歯を丈夫に守らなければならないのかなどをわかりやすく教えてくれます。1972年初版のロングセラー。

私は小さいころ歯医者さんでこの絵本を読んで好きになり、いつもこれを読みながら順番待ちしていました。「むしばきんミュータンスはタンスではありません」というオヤジギャグが今でも心から離れない・・・(ベトナム語では表現できませんが)。  

<題名>Món quà từ cửa sổ
<原題>まどからのおくりもの :鈴木永子 作
<内容>熱を出して遊べなくなったななちゃん。友達がお見舞いを持ってやってきてくれました。窓からもアゲハ蝶がやってきます。最後にお見舞いに来たじゅんくん、おみやげのアゲハが逃げてしまったとしょんぼりしていましたが、先に窓からななちゃんのところにきてくれたのでした。水彩画と子供たちの生き生きとした表情が素敵な作品です。
 

<題名>Bàn tay kỳ diệu của Sachi
<原題>さっちゃんのまほうのて :たばたせいいち 作
さっちゃんは、幼稚園のおままごと遊びでお母さん役になりたいのに、やらせてもらえません。友達から「だって手のないお母さんなんて変だもん」と言われてしまいます。さっちゃんの右手には指がありません。どうして自分の指がないのか尋ねるとお母さんは、「お腹の中で怪我をしてしまって、指だけどうしてもできなかったのよ」と教えます。お父さんはさっちゃんの指のない手を「不思議な力をくれるまほうの手」と言います。さっちゃんは傷つきながらも、障害を受け入れて乗り越えていくのです。

5歳のとき息子にベトナム語で読み聞かせをしたとき、最初はどうしてさっちゃんが指がないのか、そういう子供が本当にいるのか、信じられない様子で、何度も「どうして指がないの」と質問してきました。息子がどう感じたのかはわかりませんが、何か思うところがあったのか、なぜかしばらくの間、何度も何度も「Sachiの絵本読んで!」とせがまれました。  

 
ここに挙げた以外にもたくさんの日本の絵本が翻訳されているようですが、とりあえず入手できたものを紹介しました。自分の子供の頃に読んだ本を、子供も読んであげられるというだけでなく、自分が子供の頃好きだった絵本をベトナム人の妻や夫と共有できるというのも幸せかもしれません。ベトナム語の単語や言い回しの習得にも役立ちますので、ぜひ一度、手にとってみてください。