ツボクサ / Rau má
~ベトナム野菜図鑑(葉菜類4)~

2015年10月01日公開

[日] ツボクサ、ゴツコラ、セキセツソウ(積雪草)
[越] Rau má(ザウマー / ラウマー)、Tích tuyết thảo(ティックトゥエッタオ=積雪草)、Lôi công thảo(ロイコンタオ=雷公草)
[英] Asiatic pennywort、Indian pennywort
[学] Centella asiatica(セリ科)
[原産] 熱帯から亜熱帯にかけ全世界に分布

日本では雑草扱い、ベトナムでは青汁に

ベトナムの青汁 としてよく紹介される飲み物ご存知でしょうか。道端のあちこちで売られている青汁を甘くしたようななんともいえない味わいの飲み物。これを売っているお店には 「Rau má(ザウマー / ラウマー)」 という文字が掲げられていますが、これがその飲み物に使用している野菜の名前。砂糖が入っていて甘く、主にケールを使用している日本の青汁ほどの臭みはないので、体にいいと思えば日本人でも飲み続けることが結構いるような気がします。 体の熱を逃がす 作用があるので、特に暑い日に飲む人が多いです。


© NgBK, Rau máのジュース

この野菜は日本でも関東以西で自生しており、和名は「ツボクサ」と言うのですが、ご存知の方は多くないはず。なぜって、 雑草扱い で気に留める人は殆どいないからです。しかし、ベトナムをはじめとする東南アジアの国々やインド、中国では、体に良い身近な食材になっています。

WTOも認める重要な薬草、「若返りのハーブ」

日本ではあまり知られていなかったツボクサも、その効能から最近「薬草」として知られるようになってきたようです。ツボクサは 世界保健機構(WTO)が『21世紀に残さなければならない重要な薬草リスト』に加えた ほどの様々な効能を持っています。

ツボクサは 「若返りのハーブ」 とも呼ばれています。血流をスムーズにする作用があることから、古くから利尿、皮膚炎や傷の治癒に効果がある薬草として用いられてきましたが、最近の研究では静脈不全を解消する働きにより下肢静脈瘤や静脈炎などの症状を改善する効果が認められていることです。更に、静脈の流れがスムーズになることで、妊娠線(肉割れ)を目立たなく効果もあるのだそうです。女性には嬉しいですね。

更には、ツボクサには体をリラックスさせる効果があり、東洋医学ではうつ病の治療薬としても用いられており、 「ストレス解消のハーブ」 とも言われているそうです。また、 脳内の神経伝達物質を調整する働きがあるため、 記憶力を高める効果 もあるそうですよ。

但し、マイナスの作用もあるので注意が必要。ベトナムでは、ツボクサを食べると流産しやすいと言われているため妊婦は摂取するのを避けます。また、妊娠しにくくなるとも言われているため、子供を望む人はあまり食べないほうが良いでしょう。ツボクサは解熱の効果があるため、低体温の人、冷え性の人、風邪を引いている人などには向かず、下痢や頭痛を引き起こすとされています。血糖値を上昇させる作用もあるので、糖尿病の人は摂取しないようにしましょう。睡眠薬や抗うつ剤、糖尿病治療薬などの効果を低下させるとも言われています。


日本に生えているツボクサ

ベトナムはツボクサのお陰で救われた!?

ベトナムでは第2次世界大戦末期、日本が進駐していた1944年10月~1945年5月にかけて、北部で大規模な飢饉が発生しました。原因は米軍の空襲による南北輸送路の断絶や水害、フランス・インドシナ植民地政府と日本軍による食糧徴発が重なって深刻な食糧不足となり、諸説ありますが40万~200万人が餓死したと言われています。

このとき、北中部タインホア省では周辺省に比べて被害が少なかったそうで、それは、この地の人たちが飢えを凌ぐためにツボクサを食べていたからだと言われています。また、そのときタインホアの人たちの間で「鉄道の枕木のところに生えているツボクサがおいしい」という噂が広まり、枕木を壊してしまったので、フランス軍が鉄道を使えなくなってしまった、という逸話があります。そのため、タインホア省の人は「Dân rau má(ツボクサの民)」と呼ばれたり、「Dân Thanh Hóa ăn rau má phá đường tàu(タインホア人はラウマーを食べて鉄道を破壊した)」と言われることがあるそうです。

この逸話についてはおそらく、先に鉄道を使えなくする作戦があり、それとタインホア省の人がツボクサを食べて飢饉を凌いだという話をこじつけたものだと思いますが、戦争のこぼれ話にツボクサが登場するなんて、ちょっと面白いですね。

ベトナムで一般的な食べ方

ベトナムではジュースにするほか、お肉と一緒に炒め物にしたり茹でたりして食べます。中でも、最も食べられているのはスープだと思います。ひき肉でダシをとって、たくさんのツボグサを投入。一度にたくさんの量を食べられます。ジュースにするとかなりクセがあるツボクサですが、食べると味がミツバに似ていて、日本人にとっては馴染みやすい食材です。


© VIETJO Life, ひき肉とツボクサのスープ

コンソメスープの素でとったスープでベーコンを煮込み、ツボクサを加えてもなかなかおいしいです。お吸い物に入れても合いますよ。

ツボクサの選び方、保管方法

ベトナムでもどこででも年中とれる安い野菜の一つですので、かなり無造作に山積みにして売られています。なるべく葉がきれいに開いていて変色している箇所がないものを選びましょう。


© VIETJO Life

買って帰ったら、ボールや鍋にたっぷりの水を入れてザブザブするようにしっかり洗います。冷蔵庫に保管する場合、水気を切ってからビニール袋に入れて野菜室で保管すると、3~4日は十分持ちます。

【ポイント】 ミツバに似た香りで、暑いときに体の熱を逃がしてくれるほか、若返り、ストレス解消に効果。但し、妊婦や糖尿病の人は摂取しすぎに注意。