貝屋さんでの注文の仕方
~ローカル食を極めよう!~

2015年05月22日公開

VIETJO Lifeでコラム『 おそと呑み研究所 』を連載していますが、ベトナムでの楽しみといえば「おそと呑み」、そしておそと呑みの代表格と言えば「貝屋(Quán Ốc、クアンオック)」でしょう。でも、ほぼベトナム語しか通じないローカルのお店で、食べたいものを注文するのはちょっと難しい・・・という人のために、今回は貝屋さんでの注文の仕方と、よく食べられている貝の種類を紹介していきたいと思います。


© NgBK

基本は「貝の名前+調理方法+調味料」

ベトナム料理の名称は、基本的に「 素材名+調理方法+調味料 」の順に並んでいます。したがって、貝屋さんで注文する場合は、素材名のところに具体的な貝の名前を入れて、調理方法と使う調味料を付け足せば、貝料理の名前になるのです。そこで、貝屋さんで使われる主な調理方法と調味料のベトナム語例を一覧にしました。

調理方法 調味料
日本語 ベトナム語 発音 日本語 ベトナム語 発音
焼く nướng ヌオン muối ムオイ
炒める xào サオ 唐辛子 ớt オッ
蒸す hấp ハップ ニンニク tỏi トーイ
茹でる luộc ルオック ネギ油 mỡ hành モーハン
揚げ焼きする chiên チエン タマリンド me メー
生で食べる ăn sống アンソン バター ボー
炒る rang ザン(ラン) ココナッツ dừa ズア(ユア)
      レモングラス xả / sả サー
      チーズ Phô mai フォーマイ
      ピーナッツ đậu phụng ダウフン

 
例えば、巻き貝(Ốc)に塩と唐辛子をまぶして焼いたものは Ốc nướng muối ớt (オック ヌオン ムオイ オッ) 、二枚貝(Sò)をレモングラスを入れて蒸したものは Sò hấp xả (ソー ハップ サー)となります。慣れるまでは、上の表をプリントアウトして持ち込んで、どの貝はどの調理法がおススメかお店の人に指差してもらいながら覚えていくといいかもしれません。

貝の種類


© NgBK 

貝屋さんでは貝が並べられているので、名前がわからなくても指差し注文できます。でも、名前が何なのか気になりますよね。

日本語では巻貝も二枚貝も「貝」ですが、ベトナム語では先にも書いたとおり、大きく分けて「巻き貝=Ốc(オック)」、「二枚貝=Sò(ソー)」の二つの呼び名があります。1語しかない名前の貝には「Ốc」や「ソー」をつけますが、2単語の貝には付けないことが多いように思います。ベトナム語的には2語が語呂がいいからでしょうか。

それでは、貝屋でよく見かける貝を、調味例と合わせて紹介します。

Ốc len(オックレン):フトヘタナリの一種


© NgBK, Ốc len xào dừa

Ốc len(オックレン)は、日本で「フトヘタナリ」と呼ばれている貝の仲間。日本では絶滅危惧種なんですが、ベトナムではどこの貝屋に行っても置いてある貝です。調理法は xào dừa(ココナッツミルク炒め) が定番。貝のてっぺんが折れたようになっているのは、食べやすいようにしたのではなく、こういう貝の形なんだとか。そのため、てっぺんが空気穴の役割を果たし、口の部分から思い切り吸うと、中から貝がひゅるんと出てきます。口から息が漏れないように密閉してチュッと吸い込むのがコツです。

Chem chép(チェムチェップ):ミドリイガイ


© NgBK, Chem chép nướng(左)
     Chem chép xào tỏi(上)、Chem chép nướng mỡ hành(下)

Chem chépは海に住む二枚貝で、殻が少し緑がかっています。日本で「ミドリイガイ」と呼ばれるものと同種だと思われます。日本人の口にもよく合います。豚の背脂を溶かしてネギを炒めた油をかけて焼く nướng mỡ hành(ネギ油焼き) がおススメです。上にピーナツをかけるのが一般的で、とても香ばしいですよ。

Ốc móng tay(オックモンタイ):マテガイ


© NgBK, Ốc móng tay

貝屋に行って「これってなに????」とちょっとぎょっとしてしまうのが、このỐc móng tay(オックモンタイ)ではないでしょうか。「móng tay」は「指の爪」の意味。確かに爪のような形をしています。Ốcと呼ばれていますが、これは二枚貝。日本では「マテガイ(馬刀貝)」と呼ばれる貝の仲間で、潮干狩りでも採れるそう。味は癖がなく、アサリに似ています。


© NgBK, Ốc móng tay xào me

やはり、一番のおススメは xào me( タマリンド 炒め) でしょう。タマリンドの甘酸っぱいタレがもうやめられないとまらない。見た目はちょっとグロですが、ばくばくいけます。

Nghêu(ゲウ):ハマグリ


© NgBK, Nghêu hấp sả

Nghêuはハマグリの仲間。これは見た目ですぐわかりますよね。日本でハマグリは蒸して食べることが多いですが、ベトナムでも蒸すのが一般的。おススメは hấp sả ớt(レモングラス・唐辛子蒸し) です。ハマグリの甘みにさっぱりしたレモングラス、そして後から来るピリ辛がたまりません。辛いのが苦手な方は、唐辛子をとって「Nghêu hấp sả」と注文しましょう。

Ốc bươu(オックブオウ):タニシモドキ


© NgBK,  Ốc bươu xào me

Ốc bươuは一見するとタニシなので、タニシと紹介されることが多いですが、実は近縁のタニシモドキという貝のようです。筆者は xào me(タマリンド炒め) が好きですが、 nướng(焼く) もよし、 luộc(茹でる) もよし、色々な食べ方をするそうなので、そのお店のおススメを聞いてみると良いでしょう。

Ốc hương(オックフオン):ゾウゲバイ


© NgBK,  Ốc hương rang muối ớt

Ốc hươngは日本でゾウゲバイと呼ばれている小さな巻貝です。貝の中では高級品で、名前に「hương(香)」とあるとおり香りが良く、癖がないので、シンプルな調理法が良いのだとか。おススメは、 rang muối ớt(塩唐辛子炒り) でしょう。

Sò huyết(ソーフエッ):赤貝


© NgBK,  Sò huyết xào me

日本ではお寿司屋さんぐらいでしか見かけない赤貝、ベトナムの貝屋にも欠かせません。上の写真は xào me(タマリンド炒め) ですが、ベトナム人に最も好まれているのはシンプルな xào tỏi(ニンニク炒め) のようです。赤貝は火を通しても殻が開きませんので、貝屋で出される二股になった小さなフォークでこじ開けて食べます。手の汚れが気になる方は、シンプルな nướng(焼き) をおススメします。

Sò dương(ソーズオン / ソーユーン)、Sò lông(ソーロン):サルボウガイの仲間


© NgBK,  Sò dương nướng muối ớt(左)、Sò dương nướng mỡ hành(右)

赤貝をおおぶりにしたような貝です。Sò dươngの殻の表面には毛が生えておらず、身が白いのですが、Sò lôngのほうは殻にうぶ毛のようなものが生えており(lông=毛)、身が赤いです。Sò lôngはサルボウガイの仲間で、ベトナムの遺跡から殻が良く出てくるそうです。どちらも nướng mỡ hành(ネギ油焼き) で食べるのが一般的。赤貝ほどの癖はなく、あっさりおいしいです。

Hàu(ハウ):カキ(牡蠣)


© NgBK,  Hàu nướng

ベトナムでもカキが食べられており、最近は生食(ăn sống)するという人もいますが、普通は焼いて食べます。上の画像はシンプルに焼いただけのものですが、 nướng mỡ hành(ネギ油焼き) が最も一般的。また、チーズとマヨネーズをのせて焼く nướng phô mai にする人も多いです。

Ốc Bông(オックボン)


© NgBK,  Ốc bông xào me

Ốc Bôngも和名がわからないのですが、Bôngは「綿」という意味です。上の画像は xào me(タマリンド炒め) 。そのほか、 nướng mỡ hành(ネギ油焼き)xào tỏi(ニンニク炒め)xào bơ(バター炒め) など、色々な調理法が楽しめる巻貝です。

Ốc nhảy(オックニャイ):ソデボラ科の貝


© NgBK,  Ốc nhảy nướng

Ốc nhảyはソデボラ科に属する巻貝で、画像はちょっと厚めのすべすべした貝殻ですが、色々な種類があるようです。大きな爪を持っていて、地面を蹴って舞い上がる様から「nhảy(踊る)」という名が付けられています。シンプルに nướng(焼く)hấp(蒸す)luộc(茹る) もいいですし、 xào sả ớt(レモングラス・唐辛子炒め) にするとおいしいですよ。

Sò điệp(ソーディエップ):ヒオウギガイ


© NgBK,  Ốc bông xào me

Sò điệpはホタテと同じイタヤガイ科の二枚貝で、和名は「ヒオウギガイ」と言うようです。ベトナムでは高級食材なのですが、たまに庶民の貝屋さんでも見かけることがあります。 nướng mỡ hành(ネギ油焼き) が最もポピュラーですが、 nướng phô mai(チーズ焼き) も人気があります。

貝にはライムに塩コショウ、ヌォックマムのタレがつき物


© NgBK

貝屋さんでは、席につくとすぐ、調味料が出されます。画像の左は塩コショウにライムを搾ったもの、右はヌックマムベースの甘辛いタレです。どちらのタレを使うかはお好みですが、貝がでてきたときに、店員さんにどれで食べればいいのか、付けるジェスチャーをして聞いてみるとよいでしょう。

一緒に出てくる葉っぱはタデ(蓼)の仲間。「蓼食う虫の好き好き」のあれですね。ベトナム語は「rau răm(ザウザム / ラウラム)」です。かなり癖がありますが、解毒作用があるそうで、貝はあたりやすいので一緒に食べると良いと言われています。


© NgBK

ちなみに、小さなフォークとスプーンも出されます。巻貝は慣れるまで取り出すのに苦労しますが、これらを駆使してがんばって食べましょう。身が綺麗に出てきたときの快感が、また貝屋に足を向けさせてしまうのかもしれません。

「一皿ください」の言い方

貝屋さんは大体 「đĩa(ディア=皿)」 単位で注文します。Chem chép nướng mỡ hànhを1皿注文したいときは、「Một đĩa chem chép nướng mỡ hành」となります。但し、カキのように1個単位で注文する場合は、 「con(コン=匹)」 を使います。焼きカキ2個なら「Hai con hàu nướng」となります。

一皿の量が結構多いので、大人数で行ったほうが色々な貝が楽しめます。また、テーブルが小さいので、一度に何品も頼むとお皿がテーブルに載りきりません。料理はすぐに出来上がりますので、少しずつ頼みましょう。

 
書いているだけで、生唾が出てきてしまいました。貝好きの方、ぜひこの記事を参考にいろいろな調理法にチャレンジしてみてください!

<ホーチミン市のおススメ貝屋>
Quán Bé Ốc(4区) 、  Quán Ốc Đào(1区)Ốc Khánh(1区)

<関連記事>
おそと呑み研究所【第1回】「おそとで貝を食べる」の巻