データでわかるベトナム

【第21回】テト明けに増えるベトナム人の転職、その実情は

2016年02月24日公開

ベトナムの転職市場が最も盛り上がるのは、テト(旧正月)明けの時期です。テト前にボーナスを受け取っていること、またテトに田舎に帰ったことで心機一転したいという気持ちが高まることが背景として挙げられます。

テト明けの今、どの程度の人が転職活動をしているのか、どういった理由で転職を希望するのか、調査してみました。

転職活動をしている人は3人に1人

ベトナムのフルタイム労働者500人に対して テト明けに実施した調査では、32%-実に3人に1人が「転職活動中」 と回答しており、特に20代でこの割合が顕著に高くなっていました。

日本人から見ると、今の会社で働き続けようと考えている人が5人に1人しかいないということに大きな衝撃を受けます。転職に対して後ろ向きなイメージがある日本人とは異なり、ベトナム人は転職について前向きな印象を持っています。逆にベトナム人は、日本に「終身雇用」という考え方があることに対して大きな驚きを覚えるようです。
 

転職で最も優先するのは「給与」

「転職したい」「良い機会があれば転職したい」と思うようになることと、会社への満足度は、ある程度の関連性はありますが、絶対的なものではありません。会社に不満があるわけではないけれど、 より良い機会を積極的に求めて転職活動する 人々も数多く含まれます。

この背景には、現在のベトナム労働市場が、新卒を除いて 売り手市場 となっており、給与が右肩上がりのため、転職というステップを活用することで給与額を一気にアップできるという現状があります。特に売り手市場傾向が強いエンジニアなどの職種では、同じようなスキルでも、転職経験があるかないかで給与に3割もの差が生まれることも珍しくありません。

ベトナム人が新たな転職先探しで最も優先するのは「給与」です。 日本人の場合、「給与」を条件として前面に押し出すのは後ろめたい雰囲気もあるのですが、ベトナム人は非常に明確です。これに続くのが「福利厚生」や「昇進の機会」など。自分の労働の「対価」がいくらかというのが仕事探しのベースにあります。

転職活動のツール

それでは、ベトナム人はどのように転職先を探すのでしょうか? 最も一般的なのは、 オンラインの転職サイト です。その中でも人気なのが、エン・ジャパン株式会社(東京都新宿区)傘下のナビゴスグループ(ホーチミン市)が運営するベトナム最大の求職求人サイト Vietnamworks や、全国にホットラインを設け迅速な対応を売りにした Timviecnhanh などで、月々のアクセスが数百万にものぼり、登録者数も極めて多いです。そのほか、知人の紹介や親・親戚の縁故も有力となっています。

ベトナム人にとって、転職はキャリアをステップアップさせるための手段です。特に20代の若い世代の1社当たりの勤務期間は短く、 いかに自分を高く売るかという点について貪欲 です。とはいえ、希望給与にスキルが伴っていないケースも多く、採用してみたらミスマッチだったという話もよく聞きます。人材が流動的なだけに、面接で自社との相性をしっかりと見極めると同時に、自社が求めている人材像を明確化しておくことが採用を成功させる上で必要不可欠でしょう。

※本調査は、ベトナム人フルタイム勤務者男女500名に対して実施。「転職を考える理由」「転職ソース」については、「転職を検討中」「良い機会があれば転職を検討」と回答した376名を調査した。

株式会社Asia Plus代表取締役社長 黒川賢吾

株式会社Asia Plus ( www.asia-plus.net )代表取締役社長。

NTT、ソニー、ユニクロにて海外マーケティングを担当。

2014年にAsia Plusを設立しベトナムマーケットリサーチサービス「Q&Me( www.qandme.net )」を展開中

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