データでわかるベトナム

【第59回】ベトナム人はどこで食料品を購入するのか

2023年04月05日公開

ベトナムの小売市場の特長の一つは伝統小売市場が未だに非常に大きな割合を占める点です。特に「ウェットマーケット」と言われる食料品市場が10000近く存在し、ベトナム人にとっての主要な食料品購入場所になっています。食料品の購入に関して、ホーチミン・ハノイの女性の利用状況を調査しました。

半数以上の食料品購入をウェットマーケットに依存

昨今では多くのスーパー・ミニスーパー・コンビニなどのモダントレードが進出してきていますが、多くの人にとってベトナムのウェットマーケットは食料品の購入に欠かせない場所となっています。当社の調査では食料品購入に関して、半数以上(訪問頻度で54%・費用で53%の割合)の購入をウェットマーケットに依存しています。ホーチミンとハノイを比較すると、モダントレードの進出の進んでいるホーチミンではハノイよりもウェットマーケットの依存度が少なめです。

食品の購入チャネルを属性別に見てみると、地域で言うとハノイ、属性で言うと年配者の伝統小売市場(ウェットマーケット、伝統家庭小売)の割合が高めです。一方でホーチミンでは、4割弱の食料品購入がスーパーやミニスーパーなどを利用しています。一番の商業都市であるホーチミンであっても半数以上の購入がウェットマーケットに依存していることを考えると他の東南アジアの都市と比較しても、ベトナムにおけるウェットマーケットの重要性が窺い知れます。利用が進むオンラインショッピングですが、食料品に関しては全体の購入の2%程度にとどまっておりまだまだ限定的です。

食品購入に関しての3つのグループ

食料品の購入について、ベトナム人女性を3つのグループに分けることができます。一つ目は伝統小売への依存が高いユーザで、食料品の購入の殆どを伝統小売で済ませてしまうユーザです。年配のユーザが多く、ウェットマーケットの新鮮さや価格などに親しみを覚えるユーザです。2つ目のグループは伝統小売とモダントレードをバランス良く併用するグループです。近隣に大きなモダントレードがあるような場所に住んでおり、モダントレードの品数に魅力を感じてチャネルを使い分けています。最後のグループは食料品の購入にオンラインを利用するグループで若年層中心で、まだまだ少数派ではあります。

伝統小売とモダントレードの特長は

それでは、伝統小売とモダントレードの違いはどのようなものなのでしょうか?伝統小売(ウェットマーケット)は商品が新鮮・価格が安いといったイメージが強いのに対して、モダントレードは豊富な品数・プロモーションといった特長を認知されています。とはいえ、よく利用する店舗の特長によって認識は異なります。モダントレードをよく利用するユーザは商品への新鮮度や価格などについてスーパーやミニスーパーで事足りると感じているのに対して、ウェットマーケット利用者は価格・品質の両面で昔から親しんだ市場での購入に安心感を覚えるようです。

最近では昨年まで調子のよかった南部の食品スーパー「Bach Hoa Xanh」が店舗のリストラクチャリングを行うなど動きの激しい業界ですが、一方でウェットマーケットへの信頼感は特に年配者を中心に強固なものがあるようです。

株式会社Asia Plus代表取締役社長 黒川賢吾

株式会社Asia Plus ( www.asia-plus.net )代表取締役社長。

NTT、ソニー、ユニクロにて海外マーケティングを担当。

2014年にAsia Plusを設立しベトナムマーケットリサーチサービス「Q&Me( www.qandme.net )」を展開中

データでわかるベトナム一覧へ

関連ニュース