【第5回】性感染症のこと、どれくらい知ってますか?

2015年10月12日公開

「知り合ったはかりのバーの女の子と、コンドームなしのセックスをしてしまいました。性病をもらってしまったのではないかと心配で夜も眠れません。どうしたらいいのでしょうか、どんな検査をしたらいいのでしょうか」

性感染症への対処は、病気とその症状から診断し、治療を進めます。医師との診察時に恥ずかしさから本当のことを打ち明けなかったために、状況が複雑化し、周りの人にも病気を広めてしまうことになる場合があります。

症状が出た場合、関係を持った相手にも検査ができれば、感染もとが明らかになり、再感染などを防ぐことができます。

性感染症(STI-Sexually Transmitted Infections)は、 細菌、ウィルス、寄生虫などを原因とする感染症です。 セックス、アナルセックス、オーラルセックスなどの密接な性的接触 でうつります。

主な症状としては、男性では性器からの分泌物、女性では、性器の痛みやかゆみ、おりものの増加、排尿障害、性器周辺のできもの、下腹部の痛み、などがあります。但し、明らかな症状もなく、感染症に気づかないケースもあります。

HIVやヘルペスの他にもうつる性感染症はある?

代表的な感染症として、8つが挙げられます。このうちの4つは細菌を原因とするもので、 梅毒、淋病、クラメジア、トリコモス症 がこれにあたります。抗生物質などの治療薬で完治します。

残りの4つはウィルスへの感染を原因とするもので、 B型肝炎、ヘルペス、HIV、ヒトパピローマウィルス感染症(HPV) です。治療で症状の緩和はできますが、いったん慢性化すると完治がむずかしい病気です。

B型肝炎にはインターフェロン治療や抗生物質治療がとられますが、これは肝臓の細胞が壊れて肝臓の働きが悪くなるのを遅らせるためのものです。

クラメジアや淋病感染は尿検査で、肝炎やヘルペス、梅毒などは血清反応検査や湿式マウント検査でわかります。HIVは血液検査でわかります。

単純ヘルペスウィルス感染症は一度かかったら治らない?

ヘルペスは、かかったら治りません。 単純ヘルペスウィルスは感染力が強く、一度かかると症状は治まってもウィルスは体内の神経節(神経細胞が集まっているところ)に潜り込んで、一生そこに棲みついてしまいます。そのため、しばしば再発を繰り返します。

治療法は、抗ウィルス薬の外用薬や内服薬ですが、再発を防止したり遅れさせてたりするために抗生物質も使用します。

HIV検査は?1回検査しただけで感染していないといえる?

HIVに感染している場合、 血液中にHIVに対する抗体が検出される(=検査で陽性反応がでる)ようになるまで、3か月ほどかかる と一般的にはいわれています。この期間は「ウィンドー期間」と呼ばれ、検査をしても反応が出ないかもしれない時期にあたります。不安行為の直後に行った最初のHIV検査が陰性でも、念のため1~3か月後に再検査を受けるよう医師からアドバイスされるのはこのためです。

HIV検査に関して、日本でいう「第三世代」あるいは「第四世代」HIV検査のお問い合わせをときどき受けます。「第X世代」という検査の呼び方は、日本以外では最近ようやく耳にするようになった新しい言葉です。この検査を希望する場合は、「P24抗原検査を含んだHIV検査(=第四世代HIV検査)を希望している」、と言えば間違いないでしょう。但し、どのHIV検査を行うかは医師の判断になります。結果は数時間ほどで出ます。

不安行為後72時間以内の投与で効果のある、抗HIV薬予防的投与(ペップ:PEP- Post-Exposure Prophylaxis)による治療もあります。相手がHIVを持っているかもしれない、わからない、心配だ、という場合は医師に相談してください。ファミリープラクティスのラボでは、第四世代HIV検査、PEP治療ともに行っています。

今後、どのように自分を守ったらいい?

とにかく、自制あるのみ でしょう。

但し、 B型肝炎については予防ワクチンがあります。 大人の接種スケジュールは全3回で、1回目を接種した1か月後に2回目を、その後6~12か月後に3回目を接種します。

「感染していない者同士のセックス」では感染の可能性はありません。 不特定多数とのセックスは性感染症の可能性が高くなります から、セックスパートナーがお互いのみであることがベストです。感染防止策として、体の関係を持つ前に、性感染症検査を受けてクリアにしておくこともできます。自分は大丈夫でも、相手の状況がよくわからないときは検査をしてもらう、ということもあるかと思います。

そして、 自己防衛にはコンドームの使用が必須です。

<著者紹介>
Family Medical Practice Vietnam 
クリストファー・スアソン医師(ダナンクリニック)
医療ディレクター、家庭医
2000年フィリピン・サ ントトマス大学医学博士(M.D.)
2008年ファミリープラ クティスホーチミン・クリニック勤務
ダナンクリニックに常勤し、子どもから大人の病気まで幅広く診療を行っている。消化器科、循環器科などの専門 医による精密検査、診療が必要な患者のみなさんには、ホーチミンクリニックの奥田医師やその他専門医へのご紹介や連携治療を行っている。中部 ダナン地区での予防接種や健康診断などのご相談もお気軽にお問い合わせください。

ファミリーメディカルプラクティス

20年以上の実績を持つ、インターナショナル・メディカルセンター。ホーチミン市、ハノイ、ダナンの3都市に、5つのメディカルセンターを開設。

日本人医師、日本人スタッフも常駐。日本語ホットラインは救急時24時間対応。

救急医療・搬送サービスも提供。救急医療 専用番号 *9999 

 

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