【第19回】〜子どもおもしろ白書〜 1匹のイモムシ登場から生まれるドラマ

2022年12月20日公開

 幼稚園の園庭にある1本の木が枯れました。

 子どもたちの降園後、伐採作業に入りました。すると木の中に大きなイモムシ発見。見事に立派な芋虫なので、これは翌日子どもたちに見せようと、処分することなくタライに入れておきました。

 さあ翌日です。子どもたちが次々と登園してきます。イモムシを見つけるとリュックを背負ったまま釘付け状態になりました。朝一番の大ニュースとなりました。登園した子ども達は磁石に引き寄せられるように、イモムシの入ったタライの周りに集まり、人だかり状態になりました。そのタライの位置を変えると周りの群衆の形が変わり、まさに興味の度合いがその群衆の形で表されているようでした。

 子ども達の様子を見たベトナム男性スタッフたちが、まだ木の幹にたくさんの芋虫がいるはずだということで、切り残してある木の皮をめくり始めました。ますます子どもたちの興味は高まりました。今度はその幹の周りに集まり始め、スタッフの作業を凝視しています。さらに大きいイモムシ1匹発見。その後次々と小さなイモムシも見つけられました。通常は登園後、お部屋に行ってリュックを置いて朝の支度をするのですが、今日は部屋にも行かず、リュックを背負ったまま、タライの周りから離れません。

 しばらくすると年中児たちが、この幼虫は何の幼虫かを議論し始めます。「カブトムシ」か「クワガタ」かが主流です。「ちょうちょ」は若干名ですぐに却下されていました。

 そして「イモムシを触り」始めたのは、その後から始まりました。手のひらに乗せる、小さな容器に移すなど、面白いと思ったことは続きます。翌日もまたその翌日も登園してのすぐ「イモムシどこー?」と芋虫の入ったタライを確認していました。

 今回は流石に大きなイモムシだったこともあり、動きをじっと見る時間が非常に長かったと思います。その後これは一体何の幼虫かの論争に入り、それから実際に触ってみるという行動に移っていきました。今回の子ども達の様子から、「観察する」という行程を学びました。

発見 じっと観る → 気持ちや意見を伝える → 触る

 興味を持って動くことは、我々人間が集中して物事を進めていく基本です。子どもたちの行動から「自分のものとして取り入れていく過程」が実に面白く映りました。

 今回、私たち保育者は観察する時間の保障をしました。子ども達の様子を見て保育者ではないスタッフの協力もありました。子どもたちの学びはこうやって生まれていくんだとあらためて思ったハプニングでした。

多々内三恵子

おおぞら日本人幼稚園理事長・園長。

静岡大学教育学部附属幼稚園・青山学院幼稚園教諭を経てホーチミンで日系幼稚園を開園。

日本の保育を真摯に、かつユニークに展開中。

子どもの世界の面白さを語ったら止まらない。

>> おおぞら日本人幼稚園ウェブサイト

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