ナンバンサイカチ / Muồng hoàng yến
~ベトナム花図鑑(1)~

2016年04月27日公開

[日] ナンバンサイカチ(南蛮皀莢)、ゴールデンシャワー、ゴールデンシャワーツリー
[越] Muồng hoàng yến(ムオンホアンイエン)、Muồng hoàng hậu(ムオンホアンハウ), Hoa lồng đèn(ホアロンデン), Bò cạp nước(ボーカップヌォック), Bò cạp vàng(ボーカップヴァン), Osaka(オーサカ), Mai dây(マイザイ/マイヤイ), Cây xuân muộn(カイスアンムオン), Mai nở muộn(マイノームオン)
[英] Golden shower
[学] Cassia fistula(マメ科)
[原産] インド
[分布] 熱帯アジア
[ベトナム国内分布] 全国
[開花時期] 南部:3~5月、北部:5~7月

ベトナム南部では乾季の終わりを告げる花

日本では桜など春の花が美しい季節、ベトナムで咲き誇っているのがこのゴージャスな花、 ナンバンサイカチ です。黄色いシャワーが降り注ぐように花が咲くので、 ゴールデンシャワー とも呼ばれています。日本には自生していない木ですが、1930年代に沖縄に移植されていて、5~8月に花を咲かせるそうです。ベトナム南部では乾季の終わりが近づく3月から本格的な雨季が訪れる5月まで、1年で最も暑い時期に花を咲かせます。北部は冬があるため開花時期が遅れ、5~7月に咲きます。ちょうど卒業シーズンとなるため、卒業式のガウン姿でナンバンサイカチの木の下で記念撮影をする姿もよく見られます。

世界的な開花時期は、北半球が5~7月、南半球が11月前後だそうです。

ベトナム語名の由来

ベトナム語名は Muồng hoàng yến(ムオンホアンイエン)。 hoàng yếnは漢字で書くと「皇燕」で、黄色いカナリアのこと。花の姿が黄色いカナリアのようなことからつけられたのだと思います。Muồng hoàng hậu(ムオンホアンハウ)とも言われ、hoàng hậuは漢字で書くと「皇后」になります。そのほか別名に、Hoa lồng đèn(ホアロンデン)=ランタン花、Bò cạp nước(ボーカップヌォック)=水サソリ、Bò cạp vàng(ボーカップヴァン)=黄色いサソリ、Mai dây(マイザイ/マイヤイ)=紐の梅、Cây xuân muộn(カイスアンムオン)=遅い春の木、Mai nở muộn(マイノームオン)=遅く咲く梅、そして Osaka(オーサカ)=大阪!? があります。


© NgBK

推測ですが、「ランタン花」は、ランタンをたくさんつるしたように咲く様から。「サソリ」はどうしてなのかよくわかりませんが、花の雄しべや雌しべが反った形がサソリの尾に似ているからでしょうか。Maiは梅の意味ですが、 南部のテト(旧正月)の黄色い花をつける通称ミッキーマウスの木 のことを指し、同じ黄色い花だけれど、紐のような茎が伸びて花をつけることからそう呼ばれるのでしょう。ベトナムで「春」と言えば「テト」、それより後に咲くため「遅い春の木」と言うのは納得。

でも、なぜ「大阪」が出てくるのか、よくわかりません。おそらく同じマメ科の 日本の藤の花ととてもよく似ており、 日本の藤の花の美しさはベトナムでも知られているので、日本の有名な地名を取って誰かが「Osaka」と呼んだのが広まったのかもしれません。時々日本とは全く関係ないのに「Osaka」という店名をつけていることがありますが、ナンバンサイカチから取った可能性が高いです。
 

花の概要

日本の藤の花にとても良く似ており、枝から長さ20~40cmの房状になった花が垂れ下がります。花弁は鮮やかな黄色で、一つの花の直径は4~7cmほど。5弁の楕円形をした花びらを持ち、中央にカーブを描いた長い黄色い雄しべと緑の雌しべがあります。


© VIETJO Life

木の高さは10~20m程度。半常緑樹で、乾季の後半になると木によっては枯れてしまったように葉を落とします。その木がいつしか黄金の花で埋め尽くされるのはとても美しいです。そして花のあとには生き生きと葉が茂り、全く違う木のように見えます。


© VIETJO Life, ホーチミン市7区開発地でひっそりと咲くナンバンサイカチ

花のあとには鞘がたくさん垂れ下がります。鞘はサイズは、長さ20~50cm、幅1.5~2.5cm。鞘は最初は緑色ですが、熟すと黒く変色します。殻の中には果肉と種(豆)が入っており、果肉は臭いのだそう。完全に熟して皮が硬くなった後に取り出した豆は、民間療法で下剤として使われるとのことです。


© VIETJO Life, ナンバンサイカチの実
 

ホーチミン市周辺で花が見られるところ

ホーチミン市のタンソンニャット空港から中心部に向かうNam Ky Khoi Nghia(ナムキーコイギア)通りにある 永嚴寺(Chùa Vĩnh Nghiêm) の入り口右側には、立派なナンバンサイカチの木があり、3月~4月に美しい花を咲かせます。通りからよく見えますよ。


© NgBK, 永嚴寺のナンバンサイカチ

サイゴン川沿いの メーリン公園 の周囲はナンバンサイカチの並木になっています。ただ、南部は季節がはっきりしないせいか、同じ木が並んでいても、一斉に咲き誇らないところが残念。その分長い期間花を見ることができます。


© NgBK, メーリン公園のナンバンサイカチ

7区と4区を隔てる テー運河(Kênh Té) の7区側の道など新しく整備された運河沿いの道に植えられていたりします。7区のナムサイゴン小学校・中学校前のチャンヴァンチャー(Trần Văn Trà)通りも長い並木道となっています。ほかにも市内のあちこちで見られますので、ぜひ探してみてください。

そのほか、ドンナイ省ニョンチャックにある ボーカップヴァン・リゾート(Khu du lịch Bò Cạp Vàng) は、その名に別名の一つが冠せられているとおり、たくさんのナンバンサイカチの木が植えられていて、見ごたえがありますよ。