ランサット / Bòn bon

2015年06月08日公開

[日] ランサット(マレー語から)
[越] 南部:Bòn bon (ボンボン)、北部:Dâu da đất(ザウザーダット)
[英] Lansat、Lansa(マレー語から)
[学] Lansium domesticum (センダン科)
[原産] マレー半島
[サイズ] 一粒の直径3~5cm

最盛期は7~9月

5月に入るとベトナムの市場に並ぶようになるボンボン。5月~10月に収穫される果物で、最盛期は7~9月です。マレーシア原産で、東南アジア一帯や台湾などで栽培されていますが、日本でお目にかかることはまずないと思います。ピンポン玉のような茶色い実がブドウの房のようにびっちりついているのですが、種類によっては長い枝に少し間を置いて実がなるものもあるようです。


© NgBK

このように、木の太い幹から直接房状に実がなります。ベトナムでは主に中部から南部で栽培されており、特に 南中部沿岸地方クアンナム省 のダイロイ(Đại Lộc)郡、クエソン(Quế Sơn)郡、ティエンフオック(Tiên Phước)のボンボンが甘くておいしいと言われています。

ボンボンの木は植えてから結実するまで5年以上がかかるようで、なかなか商業ベースにのらないらしく、市場で大量に売られているということはあまりありません。

外見から想像できない食感と爽やかな甘さ


© VIETJO Life

実の皮は少し厚めですが、爪でヘタの付け根に切れ目を入れれば、簡単に手で剥くことができます。冷蔵庫に入れると皮が変色して手で剥きにくくなるので、ナイフを使ったほうがいいでしょう。外皮の下に白い薄皮があるのですが、外皮と一緒に剥くことができます。半透明の乳白色の果肉はまるでみかんの房のように5~6つに分かれていて、一粒につき1~2個の緑色の種が入っています。この種をかじると結構苦いので、かじらないように注意しながら丸ごとかじって食べます。

食感は、ナタデココをもう少しゼリーに近づけた感じ、といえばいいでしょうか、ほかの果物にはない歯ざわりです。味は、グレープフルーツの苦味をとった感じで、少し酸味のある爽やかな甘さ。まるで、 グレープフルーツゼリーを食べているよう 。果汁がじゅるじゅる出てくるわけではないのにジューシーという不思議な果肉です。


© VIETJO Life

難点は、食べていると手がべとべとになること。石鹸で洗ってもとれません。でも、30分ほどすると自然にべたべたがなくなるから不思議です。また、皮から出てくる白い樹液にはタンニンが含まれているそうで、時間が経つと皮を剥くのにつかった爪の間がどす黒く変色してしまいます。爪を汚したくない人は、ナイフを使うことをお薦めします。

歴史上重要な役割を果たした果物

ボンボンは、ベトナムの歴史書の中で「Trung Quân(チュンクアン、忠軍)」という名で登場しています。歴史を遡ること1700年代後半、グエン・フエ(阮恵)によりタイソン(西山)朝が成立した時のこと。当時中部一体を支配し、後にグエン(阮)朝を興すことになるグエン一族の軍隊は、タイソン軍に破れて南のジャングルに逃げ込みました。そのとき、兵士たちはボンボンの実を食べて飢えをしのぎ、最終的にタイソン朝を倒してグエン朝を開いたのです。このときグエン軍を救ってくれたボンボンのことを感謝をこめて「忠軍」と呼び、フエの王宮にある廟にボンボンを彫刻させたということです。

【ポイント】冷蔵庫に長く置くと皮が黒く変色し、剥きにくくなります。食べる直前に軽く冷やして食べるのがよいでしょう。常温で食べても十分おいしい果物です。