ベトナムの万能薬!?
~「緑の油」の使い方~

2015年10月30日公開

ベトナムのバスや飛行機などの乗り物で、ベトナム人が緑の液体の入った小瓶を鼻に差し込んでいるところを見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。そして漂うメントールの香り・・・。

この正体は、ベトナムの万能薬とも言える「 風油(Dầu gió=ザウゾー/ヤウヨー) 」です。ベトナム人の家庭に必ず1つは常備されているであろうこの風油。ベトナムに限らず香港やシンガポール、台湾などアジア各国でも一般的で、種類は数え切れないほどあります。


© Hata Megumi ベトナムの風油

「風油」とは?

大小様々な小瓶に詰められた油で、主に炎症や痛みを鎮めたり、気分をすっきりさせたりする目的で使います。また、民間療法(マッサージなど)の潤滑油としても使われます。

主成分は、ハッカ油(Dầu bạc hà=ザウバックハー/ヤウバックハー)などの精油。ユーカリ油(Dầu khuynh diệp=ザウクインジエップ/ヤウクインイエップ)やティーツリー油(Dầu tràm=ザウチャム/ヤウチャム)などもよく使われています。

これらの精油とメントールとサリチル酸メチルが、独特の香りと効能を生み出しています。湿布と同じ成分なので、「塗る湿布」とも言えます。

色はメーカーによって緑色や赤色、オレンジ色、無色など様々ですが、ベトナムでは緑の油「 風油精(Dầu gió Xanh=ザウゾーサイン/ヤウヨーサン) 」が一般的のようです。また、香りもメーカーによって甘かったりさっぱりしていたりと異なります。

最もメジャーな緑の油は、シンガポールの会社が製造している「イーグル」ブランドの輸入品。シンガポールでは、ベトナム人が大量の緑の油をまとめ買いする姿がしばしば見られるとのこと。ちなみに、ベトナムのメーカー数社が全く同じ形の瓶とパッケージで別ブランドの緑の油を出しています。


© Hata Megumi 「イーグル」ブランドの緑の油

どんな時に使うの?

日常生活の中で、風邪や腹痛、頭痛、肩こり、虫刺され、切り傷、擦り傷、打ち身、火傷など、病院に行くほどではないけれど体調が優れなかったりケガをしたり・・・ということもあるのではないでしょうか。

そんな時、ベトナムのドラッグストアや薬局(Nhà Thuốc=ニャートゥオックまたはNhà Thuốc tây=ニャートゥオックタイ)で症状と○日分と伝えれば、薬剤師さんが処方して小分けにした薬を買うこともできます。

それでも薬を飲むほどではなかったり、わざわざ買いに行くのも面倒だったりという時に便利なのが、この風油です。この風油を塗ったり吸い込んだりすれば、症状が改善されたり気分がすっきりしたりと良いことばかりです。

効能と使用方法

説明書に書いてある効能は、「 風邪、咳、鼻水、頭痛、日射病、乗り物酔い、吐き気、腹痛、炎症、筋肉痛、関節痛、腰痛、倦怠感、虫刺され、手足のリウマチ 」。

ベトナム人に聞いてみると、 肩こり、切り傷、擦り傷、打ち身、火傷 などにも効くとのことで、まさに万能薬です。

使用方法は、「 塗る 」または「 吸い込む 」。風邪や咳の場合、喉から胸にかけての部分に塗り込みます。また、頭痛なら眉間とこめかみに、腹痛ならおへその周囲に、そのほかの症状なら、痛みのあるところに直接塗ります。

また、乗り物酔いや吐き気など気分が優れない場合は、鼻の下に塗って、香りを吸い込みます。更に、鼻が詰まって苦しい場合は、お湯をはった洗面器に風油を数滴たらして、蒸気を鼻から吸い込みます。不思議と鼻が通り、すっきりします。

なお、ベトナム人は「お腹が痛いときにちょっと舐めるといい」という人がいますが、パッケージには飲まないよう注意書きがありますので、試さないほうが良いでしょう。

赤い油とスティックタイプ

ベトナムでもよく見かける赤い油は、髭をたくわえたおじさんの肖像画が目印の「 上標油 」ブランド。タイからの輸入品です。ハッカ油が主成分で、クローブ油やシナモン油なども含んでいるので、緑の油に比べると少しスパイシーな香りです。効能・使用方法は緑の油と同じです。


© Hata Megumi 「上標油」ブランドの赤い油(小瓶タイプ)

この「上標油」ブランド、鼻で香りを吸い込む スティックタイプ もあります。タイでは「ヤードム」、ベトナムではỐng hít mũi(オンヒットムイ=「鼻で吸い込むパイプ」の意)と呼ばれています。タイではスティックタイプの風油が一般的で、種類もたくさんあるようです。ベトナムでも複数の種類が売られています。


© Hata Megumi 「上標油」ブランドの赤い油(スティックタイプ)

「上標油」ブランドのスティックタイプは二層式になっており、キャップを外すと吸引用、胴部を分解すると手に取って使う用になっています。スティックタイプは、小瓶タイプのクローブ油やシナモン油の代わりにユーカリ油が含まれており、無色で香りも異なっていますが、やはり効能は同じです。

使用上の注意

万能薬の風油ですが、あまり頻繁に使いすぎると効き目が弱まってしまうそうです。使用上の注意として、以下の点を守りましょう。

○ 1日4回以上使用しないこと。
○ 付属の説明書を読んで、正しく使用すること。
○ 塗布する肌を清潔にし、十分乾燥させてから使用すること。
○ 1回に多量を使用しないこと。
○ 妊娠中の女性や2歳未満の子供の使用は医師に相談すること。
 (※乳幼児用の効き目の弱いものも売られています)

メーカーによって色も香りも異なる上、小瓶のデザインもコレクションしたくなるようなものばかり。常備薬として、ぜひ使ってみてください。価格もお手頃なので、日本へのお土産にも良いかもしれませんね。

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