テトのお年玉、相場って?
~知らなきゃ困るテト事情(1)~

2015年02月10日公開

祝日の少ないベトナムで唯一大型連休となるテト(旧正月)。在住外国人の多くはこの時期に帰国したり、テト休業や帰省ラッシュを避けてテトのない国に脱出したりしますが、特にベトナムに住み始めたばかりの人は、「一度はベトナムのテトを体験してみよう」と留まるケースも多いと思います。そんなとき、テトの「縁起」を重んじるベトナムの習慣に、外国人が戸惑うこともあるでしょう。そこで、知っておくべきテトの習慣を紹介していきましょう。


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ベトナムにもお年玉の習慣が

日本でお正月に子供たちへ渡すお年玉。ベトナムにも同様の習慣があります。ベトナム語でお年玉のことを、北部では「Mừng tuổi(ムントゥオイ)」、南部では「Lì xì(リーシー)」と言います。「Mừng tuổi」の「mừng」は「祝う、喜ぶ」、「tuổi」は「歳」、つまり新しい年を迎えて歳を一つ重ねることを祝うという意味合いがあります。「Lì xì」は古い中国語の「利市」からきた言葉で、現在中国語では使われていませんが、香港では今でもお年玉やお祝いの時に渡すお金のことを「利是(ライシー)」といいます。

お年玉を渡す相手

日本でお年玉を渡す相手は親戚の子供ぐらいに限られますが、ベトナムではもっと広い範囲になります。自分の子供、親戚の子供、子供の友達、友人の子供、招かれた家にいる子供など、テト期間中に出会った「ただのご近所以上の付き合いがある家族の子供」がすべて対象になると言えるでしょう。「子供」の範囲ですが、だいたい高校生ぐらいまで。親戚の子であれば大学生でも渡す家庭もあります。

そして、お年玉は大人にも渡す場合があります。上司と部下、主人と使用人といった関係の場合、それから社会人になった子供が親や祖父母に渡す場合です。

会社の場合、ベトナムでは年間の給与額が「13か月分」とされていて、13か月目の給与はテト前の賞与となっており、この賞与がある意味お年玉の役割をしていますので、基本的には会社としてお年玉を配る必要はありません。配るとしたら個人的に出すことになりますが、従業員が多ければかなりの金額になりますので、上司個人では一切配らないことにしている会社も多いです。

一方で、全員にきっちり配っている会社や直属のごく少数の部下のみに配っている会社もありますので、駐在員などで赴任してきた場合は、前任者からそのあたりの事情も引き継ぐと良いでしょう。また、一旦お年玉を配りはじめると、毎年渡さなければ従業員は不満を持ちますので、後々のことなどもよく考えてから配るかどうか決めましょう。

個人的に雇っているメイドや運転手などの使用人については、テト前に会社と同じく13か月目の賃金を払うと思いますので、お年玉はなくても大丈夫。もちろんあげてもかまいません。テトに田舎に帰ってそのまま戻ってこないというケースもあるので、「お年玉を払う」ということを示して戻ってくる確率を高める例もあります。

自分が直接雇っているわけではないけれどよくお世話になっている会社の運転手、サービスアパートの従業員や守衛、ゴルフ場のキャディーなどには、良い関係を築くためにもお年玉を渡すとよいでしょう。普段お世話になっているけれどなかなかお礼ができない場合などに、お年玉という機会を使ってお礼をすることもできます。

テト中の旅行でお世話になる運転手やガイドさんなどにも渡すと、気持ちよく仕事をしてくれると思います。

金額の目安

お年玉で渡す金額は、渡す人の収入、両者の関係の濃密さ、地域などでかなり差があります。ここでは、日本人がお年玉を渡す際の目安になる、都市部に住む中流層の上部~富裕層の平均的なお年玉額を紹介したいと思います。もちろん、もっと少なくても多くても、「縁起物」ですから問題ありません。

渡す相手 金額の目安
自分の子供 10万~100万VND 親の方針次第
友人の子供 10万~20万VND
子供の友達 5万~10万VND 子供同士の親しさに応じて
家に招いてくれた人の子供 10万~20万VND
訪問先にいる子供たち 2万~5万VND
近所でよく会う子供たち 2万~5万VND
両親、祖父母 100万VND
会社の部下 10万VND~
上司や部下の子供 10万VND~ 上司にゴマをするときは多めに
部下に渡すかわりとしてその子供に多めに渡す場合も
その他 2万VND~20万VND お世話になっている度合いや配る人数で
  • 農村部では、5000VNDから多くても10万VND程度です。現金収入があまりないため、お年玉を渡せない家庭もたくさんあります。

 
ベトナムの5万VND札は赤色 なので、お年玉に最も好んで使われています。親しい間柄だと、同じく赤い500VND札を束にして渡したりしてウケを狙うことも。ちなみに、日本では「3」が好まれるので3万VNDを入れたくなりますが、ベトナムでは非常に中途半端な数字と捉えられるので普通は入れません。

また、2米ドル札は持っていると幸運を呼ぶと言われており、よくお年玉に使われます。そのほかの外貨も、縁起の良い図柄のもの は珍しいと好む人もいるようです。日本の1000円札は地味なので、喜ばれるかは微妙ですが・・・。

お年玉をねだる人の本気度は?

ホーチミン市だと、ちょっと顔見知りという程度の子どもや大人まで、「Lì xì đi !(リーシー・ディー)」(お年玉ちょうだい)とねだってくることがあります。これはだいたい本気で言っているのではなく、からかっているだけか、もらえたら儲けもの程度の考えです。たいていの場合、「Không có tiền(コムコーティエン)」(お金がない)でスルーして大丈夫。もちろん、相手との関係によってはお年玉を渡して喜んでもらうのもいいですし、宝くじ を買って渡すなんていうのも洒落ています。ハレの日ですから、「しつこい!」などとプリプリせず、笑ってスルーしましょう。

  • 豆知識
    南部でよく聞く「Lì xì đi !(リーシー・ディー!)」(お年玉して!)という言葉、北部では「Mừng tuổi đi !(ムントゥオイ・ディー!)」とストレートにお年玉をねだることは殆どないのだそうです。その代わりに、「今年もたくさんお金が入りますように」「今年もきれいでありますように」など相手が喜ぶ言葉をたくさん言って、お年玉を出すよう仕向けるのだとか。「あけっぴろげな南部人」と「本心を明かさず策略家の北部人」という気質がこんなところにも表れているようです。

 
お年玉は、必ずあげなければならないわけではありませんし、金額が決まっているものでもなく、あくまでも「気持ち」。また、子供の場合は誰からいくらもらったかあまり気にしていない親が殆どですので、それほど難しく考える必要もありません。全部一律の金額でも大丈夫ですし、「親しい人」「それ以外」の2段階で用意しておいても良いでしょう。但し、縁起物ですので、ベトナムの人たちがハッピーな気持ちになれるよう、自分の懐具合と相談して事前に準備しておきたいものですね。

次の回では、実際にお年玉をどのように渡すのかを説明します。

テトのお年玉の渡し方~知らなきゃ困るテト事情(2)~
テトにやってはダメなこと~知らなきゃ困るテト事情(3)~