バイクの乗り方
~あの「暴走族」の一員になる~

2015年01月19日公開

公共の交通機関が発達していないベトナムでの庶民の足はバイク。ベトナムのタクシー料金は日本に比べれば遥かに安くて使い勝手が良いですが、毎日のこととなると留学生や現地採用の身ではかなりの出費に。そのため、ベトナムに来てから初めてバイクに挑戦することになってしまった方も多いのではないでしょうか。

でも、あの「暴走族」のようなバイク集団を目の前にすると、その中で自分がうまく運転できるか不安ですよね。そこで、ベトナムでバイクに乗るときのコツや注意点をご紹介したいと思います。


© Richard Liblanc / CC-BY

最も重要なのは「流れに乗る」こと

ベトナムだけでなく、どこの国でも車やバイクを運転する際に「流れに乗る」というのは重要なポイントですが、ベトナムのように車間距離が極端に短い場合には、まず交通に「参加」するための最大のポイントとなります。

あんな大群の中で流れに乗るなんて、傍から見ていると難しそうに見えますが、街中の走行速度は時速20km程度とかなりゆっくりで、空いている道でも時速40km程度のスピードしか出ていないので、一度走り出してしまえば案外容易く流れに乗ることができます。気をつけなければならないのは、一度乗った流れを乱さないことです。

ちなみに、日本とは逆の右側通行であることについては、タクシーやバイクの後ろなどに乗っている間に案外すぐ慣れるようで、難しいと感じる人はあまりいないようです。おそらく中心街の場合は交通量が多く、流れに乗っていれば車線を間違えようがないためだと思われます。

突然止まってはいけない

例えば、歩行者が前方で道を渡ろうとしている場合、日本では一旦停止して道を譲りますが、後ろとの車間距離が全くないベトナムでは、停止すると後ろの車両がぶつかってしまいます。もちろん、止まらないと前方の障害物にぶつかる場合は別ですが、例え歩行者が渡ろうとしていたとしても、後ろの安全が確認できない限り、安易に停止してはいけません。

車線変更では必ず振り返る

ベトナムでは十分な車間距離をとらずに走るのが普通なので、バックミラーに映らないすぐ脇の死角に他のバイクがいるのは当たり前。右折や左折、進路変更のときには、振り返って脇を見る癖をつけましょう。また、前に左のウインカーを出して左側に寄っている車両がいても、ベトナム人の多くは前にいる車両がどういう動きをしようとしているか予測していないため、平気で左側から追い越していきます。追い越ししようとしているバイクがいないかよく確認すると同時に、自分が今曲がろうとしているという意思表示をはっきり示すためにも、振り返るという動作が効果的となります。

歩行者を避けるときは歩行者の前から

自分の前方より右手に車道に出た歩行者がいた場合、日本人の感覚だと歩行者の後ろ側を通るのが安全だと思ってしまいますが、これは間違い。大きく進路を変えるのは流れを乱すと危険なので、歩行者の進み具合を予測して最も小さな進路変更で回避すべきですが、そうすると必然的に歩行者が今立っている位置に向かってバイクを走らせることになり、歩行者は自分に向かってくるバイクに足がすくんで立ち止まってしまいます。そうすれば当然ぶつかることに。

歩行者の移動を予測して、歩行者の前を通り過ぎるようにすると、歩行者からはバイクが自分から離れた向きに走っていくように見えるので、安心して進むことができます。もちろん、既に自分の目の前より左手のほうへ出てきている歩行者については、後側から回避しましょう。


© Jon Wick / CC-BY

路面の状態には要注意

ベトナムは日本に比べて道路の舗装状況がよくありません。特に雨季の後には大きな穴ぼこが出現したり、マンホールの蓋が外れているなんてことも。前方のバイクが前に障害物がなさそうなのに突然回避行動を取ったときは要注意。路面に穴が開いていたり、障害物が落ちている可能性が大きいですので、路面に注意を払いましょう。

空いている道でゆっくり走ってはダメ

不慣れな場所で、通りや番地を探しながらキョロキョロして走っているときに、思いもよらないところから走り出てきたバイクにぶつかるという事故がよくあります。今は、グーグルマップなどでかなり正確に場所を調べることがでるので、頭に地図を叩き込んでから出かけるようにしましょう。また、走行中に場所を確認するときは、走りながらではなく、一度路肩で停止してから確認したほうが無難です。

事故以外に、ゆっくり走ってはいけないもう一つの理由として、「引ったくり」防止があります。ベトナムは凶悪な犯罪が少ない国ですが、引ったくりは頻発しています。日本人からするとバイクで走っている人から奪うなんてそんなことができるのか、と驚いてしまいますが、日常の全ての移動をバイクで行っているベトナム人にとってみれば、走行中の引ったくりは日本の満員電車の中でスリをするのと同じこと。でも、さすがに逃げ場のない混雑した道や、高速走行中にひったくるのは至難の業。被害に遭った人たちの話を聞いて見ると、多くはある程度空いた道で比較的ゆっくり走っているときに発生しているようです。並走しやすく、また加速して逃げやすいからでしょう。荷物はできるだけ座席下に入れたり、バイクに金具で留めておくなどの対策が必要です。また、安全のためにゆっくり走るのではなく、スピードの出せるときは出すことも大事。エンジンのためにも、時には回転数を上げてやりましょう。

大きな車両が最優先、パッシングは「どけどけ」の合図

日本では歩行者優先が当たり前ですが、ベトナムでは歩行者よりバイク、バイクより乗用車、乗用車よりバスやトラック、というように、慣性の法則において車線を変更したり停止したりしにくい大きい車両ほど優先的に走る傾向が強いです。交差点に差し掛かった自動車がパッシング(ヘッドライトを点滅)しても、日本のように「先に行け」という意味ではなく「出てくるな」という合図ですので、ご注意を。また、バスやトラックに巻き込まれる事故も多いですので、大型車に近づかないように走行するのが無難です。大きな荷物を積んでいるバイクやトラックの荷物が突然ほどけて落ち、ぶつかって転倒するケースもありますので、近くを走行しないようにしましょう。


© VIETJO Life

クラクションを効果的に使おう

一日中街に響き渡るクラクションにはうんざりしますし、日本人の感覚としてはあまり使うべきではないと思ってしまいますが、自分の存在を相手が気づいていない可能性があるとき、最も効果的に危険を回避することができるという点でクラクションは大変有効です。うろうろ行き先が定まらない運転をしているバイクを追い越すとき、脇を走行中の自動車が巻き込み確認をしないで曲がろうとしているときなど、要所要所で自分の存在を知らせるために使用できるよう、クラクションはいつも鳴る状態にメンテナンスしておきましょう。クラクションが鳴らないときは「オイ!」や「ウェイ!」という掛け声が効果的です。

日本以上に「だろう運転」は危険だという意識を持とう

日本では一方通行を逆走する車両はまずないし、突然歩道を走行していたバイクが飛び出てくることもないと思いますが、ベトナムではごく普通のことです。逆走する車両はない「だろう」、ここからでてくる車両はない「だろう」、という考えは捨てましょう。ベトナムであれだけルール違反をしている人がいるのに何とか秩序を保っているのは、自分自身を含めてルールを守らず運転している人がいることを折込済みで運転しているためだと思われます。ルールを守っていない相手が悪いと腹を立ててみたところで、事故にあって怪我をして損をするのは自分。ルールを守らず運転していない人がいる「かもしれない」どころか、「必ずいる」という意識で運転することが大事です。

ベトナムでは自転車がバイクに置き換わっただけ

日本ではバイクの免許を取得するのにたくさんの講習を受け、筆記試験、実技試験をパスしなければなりませんが、ベトナムでのバイク免許取得は、簡単な筆記試験と実技試験に合格するだけでOK。みな、自転車に乗るような感覚でバイクに乗っているどころか、自転車に乗れないのにバイクを運転しているという人も多いのが実情です。日本ではバイクに乗ろうと考えないような運動神経の人でも、他に交通手段がないため、バイクに乗らざるを得ません。ですから、相対的に見ると、ベトナム人の運転は「下手」であり、日本の免許所有者が持っているような基礎知識は殆どないと見ていいと思います。

それでも、あの暴走族のような集団がうまく流れているのは、好き勝手やっているようなベトナム人にも、「みんながやっているからそれに合わせる」といった日本人に近い感覚を持ちあわせているからこそ成り立っているのかもしれません。周りに合わせることなら、日本人の十八番。皆と一緒に「流れに乗る」ことを心がけて運転してみましょう。


© tariusxj / CC-BY

 
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