クレソン / Xà lách xoong
~ベトナム野菜図鑑(葉菜類3)~

2015年08月07日公開

[日] クレソン(フランス語から)、オランダガラシ(和蘭芥子)、クレス
[越] Xà lách xoong(サーラッソーン)、Cải xoong(カイソーン)、Rau liệt(ザウリエット / ラウリエット)
[英] Watercress
[学] Nasturtium officinale(アブラナ科)
[原産] ヨーロッパから中央アジア

フランス支配がもたらした野菜

日本では「ステーキのつけ合わせ」程度にしか使われないクレソンですが、ベトナムでは野菜やスープにたっぷり使います。クレソンの原産地はヨーロッパ周辺で、フランスのインドシナ支配と共にベトナムへこの野菜がもたらされたのだと思います。現在ベトナムではすっかりお馴染みの野菜です。

クレソンはベトナム語で Xà lách xoong(サーラッソーン) または Cải xoong(カイソーン) と呼ばれています、「xoong」はフランス語の「Cresson」の発音に由来していて、「Xong」「Soong」などと書くことも。南部ではXà lách xoongと呼ぶことが多いのですが、これは「Xà lách」=「サラダ」に使う野菜、といういう意味。「Cải」はホウレンソウやキャベツ、白菜のような葉物野菜の総称です。

半水生で水辺や湿地帯で育つ植物ですが、暑さにあまり強くありません。そのため、ベトナムでは中部高原の涼しい地域で栽培されており、特にフランス統治時代から避暑地として栄えた 南中部高原地方ラムドン省 のダラット周辺で栽培が盛んです。

年間を通じて市場に出回っていますが、南部で出回っているクレソンの多くは、それほど成長していない葉が小さくて茎が細く、背丈が低いもの。茎から細かい根が出ていたりします(根もそのまま食べてしまいます)。それを無造作に山盛りにして売っているので、日本人が見てもクレソンだとわからないかも。また、クレソン特有の辛味があまり強くないので、日本のものより食べやすいかもしれません。一方、産地のダラットのクレソンは茎が太くて長く、緑が鮮やかで見た目がいかにも新鮮。もちろんおいしいです。ダラットに行く機会があれば、ぜひクレソンを味わってみてください。

クレソンは「最強の野菜」!?

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の機関誌に掲載された研究で、健康に重要とされるカリウム、食物繊維、タンパク質、カルシウム、鉄、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、葉酸、亜鉛、ビタミンA、B6、B12、C、D、E、Kの17栄養素の含有量をもとに食品をスコア化したものがあります。これで、ホウレンソウなど他の野菜を上回りトップに輝いたのがクレソンだったのです。まさに 「最強の野菜」 ですね。

また、抗酸化作用を持つカロテン(カロチン)が豊富に含まれており、 血液をきれいにして生活習慣病を予防 する効果や、 ガンや老化を防ぐ効果 があります。クレソンに含まれる辛味成分は「シニグリン」というもので、 食欲増進、胃もたれ解消の効果 があります。だから肉料理の付け合せによく使われるんですね。 口臭予防にも効果 があるそうですよ。

ベトナムでクレソンは薬草の一つとして紹介されています。 結核や慢性気管支炎の咳止め、胆石・腎臓結石治療、解熱、糖尿病治療 などに使われるそうです。

ベトナムではサラダや和え物、スープでたっぷり食べる

付け合せにするだけではもったいない栄養豊富なクレソン、ベトナムではクレソンを主役として食べることも多いです。新鮮なクレソンを堪能するには、やはりサラダが一番ですが、やっぱりたくさん食べるには火を通したほうが食べやすい。南部では新鮮なクレソンがあまり手に入らないこともあり、 クレソンとひき肉のスープ (Canh xà lách xoong nấu thịt bằm、カイン サーラッソーン ティットバム、写真左)にして食べるのが一般的です。クコやナツメなどの漢方食材を煮込んだスープにクレソンを入れることもあります。

サラダにして食べる時は牛肉を入れることが多いです。その他、 手羽先唐揚げヌオックマム風味(Cánh gà chiên nước mắm) のような肉料理の付け合せにもたっぷりと使われます。

選び方と保存方法

なるべく緑が濃く全体がピンと張ったものを選びます。茎がまっすぐなもののほうが、収穫してから時間が経っていないとのこと。 乾燥に弱い ので、市場などでは水をかけた状態で売られています。スーパーで買ったものは水がかかっていなかったりしますので、家に持って帰ったらすぐ水をかけてやりましょう。冷蔵庫に保管する時は、湿ったキッチンペーパーにくるんでからビニール袋に入れると、乾燥しにくいです。

【ポイント】栄養豊富なクレソンをたくさん食べるには、スープがおススメ! 乾燥に弱いので、買ったらなるべく早く食べましょう。