ウスバスナコショウ / Rau càng cua
~ベトナム野菜図鑑(香草類2)~

2016年02月18日公開

[日] ウスバスナコショウ、イシガキコショウ
[越] Rau càng cua(ザウカンクア / ラウカンクア)、rau tiêu(ザウティエウ / ラウティエウ)、đơn kim(ドンキム)、đơn buốt(ドンブオット)、cúc áo(クックアオ)、quỷ châm thảo(クイチャムタオ)、thích châm thảo(ティックチャムタオ)、tiểu quỷ châm(ティエウクイチャム)、cương hoa thảo(クオンホアタオ)
[英] Pepper elder, Shiny Bush, Shining bush plant
[学] Peperomia pellucida(コショウ科)
[原産] 熱帯アメリカ

 

よく食べる雑草!?


© VIETJO Life

このハート型の葉っぱの野菜、ベトナム料理のサラダや和え物の中に混じっているのをよく見かけるにもかかわらず、市場で売っているのを見たことがないなあ、と思ったりしていませんか? ベトナム語では一般的に Rau càng cua(ザウカンクア / ラウカンクア) と呼ばれる香草です。Rauは葉野菜の総称、càngは(エビやカニなどの)ツメ、cuaはカニの意味。先端につく2つの花の房がカニのツメのように見えることから、この名がついたそうです。

コショウ科の植物で、rau tiêu(ザウティエウ / ラウティエウ=コショウ野菜)とも呼ばれています。花の房(といっても殆ど花は見えませんが)には小さな小さな黒いコショウのような実がたくさんできます。繁殖力が強く、水と土さえあれば簡単芽がでて増えるため、ベトナムの道端にはたくさん生えています。木の下などの日陰でよく育ち、庭に勝手に生えています。庭がなくても大きな鉢植えの根元で育てている(勝手に生えている?)家も多く、わざわざ市場で手に入れるような食材ではないため、売られているのを見かけることは殆どありません(大型スーパーでたまに袋詰めされたものが売られていることがあります)。

日本では一応、ウスバスナコショウという名前がありますが、一般に見かけることはありません。広く熱帯地方で自生しているため、日本でも時々輸入の鉢植えの中から生えてくることがあるようですよ。


© NgBK

爽やかな辛味で鼻に抜ける独特の香り

味はなんとも表現できないのですが、爽やかな辛味があり、コショウとカイワレダイコンを混ぜたような鼻に抜ける独特の香りがあります。かといってパクチーやどくだみのような強烈な香りではないため、日本人には比較的なじみやすい香草です。


© VIETJO Life,gỏi gà(ゴーイガー、鶏肉と野菜の和え物)

ベトナムでは他の野菜と混ぜてgỏi(ゴーイ)と呼ばれる和え物にすることが多く、もっともよく使われるのはgỏi gà(ゴーイガー、鶏肉と野菜の和え物)ではないでしょうか。また、牛肉やカエルなどを濃い味付けで調理したものの付け合せにしたり、生春巻きの中に入れることもあります。


© NgBK

日本人的食べ方としては、カイワレダイコンの要領で食べるのがいいかなと思います。サラダに入れたり、ハムに巻いて食べたり、お吸い物、うどんやそばなど汁物に薬味代わりにさっと入れて食べるのも合いますよ。
 

貧血予防や成人病に効果

雑草あつかいのウスバスナコショウですが、鉄分を多く含んでいるため 貧血の人が積極的に摂取すると良い と言われているほか、 高血圧や糖尿病、心臓疾患、動脈硬化、便秘の予防に効果 があるそうです。雑草といえども、あなどれませんね。
 

家で育ててみよう!

お店ではあまり売られていない野菜なので、ウスバスナコショウ大好きという人は、自宅で育てるのがよいでしょう。道端に生えているものを引っこ抜いて適当な鉢植えに植えて、毎日しっかり水さえ与えればよく育ち、黒い実を指でしごいて周囲にまいておけば、勝手に増えていきます。放置しておくと30cm以上の長さまで育ちますが、大きく育つと茎が太くなりますので、やわらかい食感が好きな場合は15cmぐらいまで育ったところで食べるのが良いでしょう。

収穫する前に、黒い実を土に落としておきます。引き続き水を与えていれば勝手に次々生えてきます。注意点は、 直射日光に当てないこと。 ためしに直射日光で育ててみたところ、色があせ、背丈が伸びませんでした。とはいえ明るさは必要なので、直射日光の当たらない明るい窓辺などで育てるのがよいでしょう。台所の窓辺で育てておくと、お料理にちょっとした彩りが欲しい時にとても重宝しますよ。
 

買ったものを保管する場合は

収穫後は日持ちがしないのでなるべく早く食べたほうがよいですが、水をしっかり与えればピンピンしていますので、数日保管したい場合は、冷蔵庫に入れるのではなく、水を張った洗面器などに茎の根元をつけておき、まめに水を替えるのがよいでしょう。
 

【ポイント】市場やスーパーではなかなか売られていないので、自分で調理したい場合は育てるのが一番の近道。直射日光の当たらない明るい場所で水をたっぷり与えればよく育ちます。

 
<関連記事>
リモノフィラ / Ngò ôm~ベトナム野菜図鑑(香草類1)~