データでわかるベトナム

【第42回】小売店舗数から見るベトナムの現状

2018年05月16日公開

元々伝統的な小売店舗や家族経営の店舗などが多かったベトナムですが、ここ数年でチェーン店やモダントレード(MT)店舗などが急速に増えてきています。今回は、ベトナムの小売店舗数から現在のベトナムの小売のトレンドについて把握していきたいと思います。全体的には、ベトナムのチェーン店舗やモダントレードは確実な増加を見せています。それぞれのカテゴリーで15〜50%ほど店舗増加の傾向にありますが、具体的なトレンドとしては下記が挙げられます。

ミルクティー店舗の急増

ここ1、2年のベトナムでのミルクティー店舗の人気はすさまじいものがありますが、台湾などのミルクティー店舗も急速に増えています。代表的な店舗では、ディングティー (DING TEA)が200店舗、 トコトコ (TocoToco)は150店舗、 ボバポップ (BoBaPoP)は106店舗などで、 ミルクティーチェーン店舗の数は既にコーヒーチェーン店舗の数を上回っています 。これは、特に北部においては独立経営のコーヒー店が多いことも影響していますが、その点を差し引いてもミルクティー人気の勢いを感じます。

携帯ショップ「テーゾイジードン」グループの店舗拡大

ベトナム最大の携帯ショップ テーゾイジードン (The Gioi Di Dong)ですが、グループ会社の家電チェーン ディエンマイサイン (Dien may XANH)ともに急激に店舗数を拡大しています。特にホーチミン・ハノイの郊外への進出が顕著で、2社の合計店舗数は2400店舗に到達しています。この数値は スーパーマーケット(308店舗)・コンビニ(1819店舗)などの食料品や生活用品を扱う店舗の合計数を上回っています

スマホチェーンの店舗数が生活用品を扱うチェーン店舗よりも多いというのは、パパ・ママショップが多い一方、スマホ所有が当たり前となっているベトナムならではの特長ではないでしょうか。スマホなどの販売による平均単価の高さ、地方でのスマホ需要の高まりに加えて、高いITオペレーションがテーゾイジードングループの成功を支えていると考えられます。

コンビニエンスストア店舗展開の鈍化

この1年で セブンイレブンGS25 など多くの外資系コンビニがベトナムに進出を果たしました。 コンビニの店舗数は前年度比較で20%以上伸びていますが、一方で店舗数拡大の勢いは2017年と比べると鈍化 しています。2017年にはビングループ配下の ビンマートプラス (Vinmart+)が1年で数百店舗レベルで店舗拡大を果たし、街の至る所にビンマートプラスがオープンするような状況でしたが、これらの動きが少し落ち着いてきている点が背景としてあります。特に都市部では地価の上昇から利益を確保するのが困難な店舗もあるようです。

また、 MINISO (メイソウ)や MUMUSO (ムムソー)などの雑貨チェーン店が急速に伸びているのも現在のトレンドと言えます。

※左のグラフには、今年からの調査対象店舗(Zakka Mart, 7 eleven, Satrafoods, GS25)は含まれていません。

郊外での店舗数の拡大

店舗数の拡大は、ホーチミン・ハノイよりも主に郊外で目立ちます。特に ビンコム (Vincom)などのデパートが郊外に進出している ことが要因として考えられ、デパートのホーチミン・ハノイ以外での都市での店舗数は、2017年の15店舗から大きく飛躍し現在は34店舗となっています。このトレンドが、アパレルチェーンやドラッグチェーン、映画館などの店舗数の増加にも起因しています。地方のデパートに行くとまだ割と閑散としていたりしますが、将来的な投資の第一歩ということなのでしょうか。

今後も伝統小売からモダントレードへの変化は確実に起こると考えられます。ただ一方で、例えばお隣のタイでは1万店舗以上のセブンイレブンがあることを考えると、まだまだ伝統小売店舗が強いという印象を受けるのではないでしょうか。

※2018年5月現在のデータ。2017年のデータは2017年2月時点のもの。

 

株式会社Asia Plus代表取締役社長 黒川賢吾

株式会社Asia Plus ( www.asia-plus.net )代表取締役社長。

NTT、ソニー、ユニクロにて海外マーケティングを担当。

2014年にAsia Plusを設立しベトナムマーケットリサーチサービス「Q&Me( www.qandme.net )」を展開中

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