データでわかるベトナム

【第48回】ベトナムのモバイル決済の現状について

2020年01月16日公開

ベトナム都市部では、コンビニなどの店舗やレストラン、カフェなどにおいて、モバイルで支払いを行う人々の姿を見ることが多くなりました。現金主義のベトナムですが、すでに30ものモバイル決済業者が存在し、競争は日々激しさを増しています。今回はモバイル支払いの現状について、モバイル決済利用者への調査結果から見ていきます。

どんな時にモバイル決済を使いますか?

現在、多くのモバイル決済業者が、様々なプロモーションを実施していることもあり、お店のレジ周りでは数社のモバイル決済の販促物が並んでいます。いくつかのサービスでは、モバイル決済を使った方が値引きが大きいことから、価格に敏感なベトナム人の間でモバイル決済の利用が進んでいます。特に利用が多いのが、携帯料金のトップアップや公共料金の支払いなどの分野です。使ってみると「すぐに支払いが終わる」「簡単に使える」などの面から満足度は高く、 モバイル決済利用者の92%が満足 しているという結果も出ています。

どのモバイル決済会社を使っていますか?

多くの業者がサービスを提供していますが、その中で知名度及び利用の両面でベトナムにおけるスタンダードとなっているのが「 Momo 」です。ブランドカラーとして目立つピンクを採用していることもあり、そのロゴを見かけたこともある方も多いかと思います。「モバイル決済といって思い浮かぶブランドは?」という質問に77%がMomoの名前を挙げ、 最も利用しているモバイル決済業者としても68%がMomo を挙げています。

Momoが人気ナンバー1の理由とは

Momoの人気の理由として挙げられるのは「プロモーションが多い点」と「多くの店舗で利用できる点」の二つです。多くの店舗、カフェ、レストランなどでMomoを利用するとディスカウントが受けられ、且つMomoは古くから店舗展開の活動を進めてきたこともあり、他のモバイル決済と比較してもダントツで利用できる店舗が多く、利用勝手の良さが目立ちます。

モバイルペイメント消極派の声と今後の展望

一方でモバイル決済を利用しない人々の間では「セキュリティが心配」や「使い方がわからない」といった声が聞かれます。モバイル決済で利用される QRコード についても、何となく見たことはあるけど使い方を知らないといった人も少なくなく、サービス浸透の障壁となっています。また、現状でモバイル決済を利用する人の一番の理由が「割引」にあるため、多くの業者が利益を鑑みずに多くのプロモーションに投資をしています。今後、割引による経験を経て、どれだけ利便性などの他の利点が浸透するかも重要な鍵になります。

現金第一主義のベトナムにて支払い手段の多様化が進むことは、様々な産業に影響を与える非常に潜在性の高い重要な分岐点です。現在、多くのモバイル決済提供者に投資資金が集まっており、今後も様々なマーケティング施策により利用の促進がなされていくと予想されます。

株式会社Asia Plus代表取締役社長 黒川賢吾

株式会社Asia Plus ( www.asia-plus.net )代表取締役社長。

NTT、ソニー、ユニクロにて海外マーケティングを担当。

2014年にAsia Plusを設立しベトナムマーケットリサーチサービス「Q&Me( www.qandme.net )」を展開中

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